未来のために!マレーシアで脱プラを進める熱き人々【前編】
2018年7月、中国などに続いてマレーシアでも、プラスチックごみの輸入規制を講じることになりました。にもかかわらず、19年5月には、不法にプラスチックごみが輸入され、摘発によって日本を含む輸出国へと送り返されるという事件がありました。
かつては経済的な理由からごみの引き受け手だった東南アジアの国々も、大きく変わろうとしています。マレーシアのなかでも多くの先鋭的な取り組みが見られるペナン州。日本ではリゾートとして知られるものの、実像は工業地帯という同州もまた、変化の渦中にあります。熱いパッションを持った現地の人々に話を伺いました。
プラスチックフリーの無添加石鹸&
ペナン州トップの環境配慮型ホテル
複合施設「AUTO-CITY」で月に一度開催されているコミュニティ・マーケット。そこで出会ったのは、無添加石鹸をつくっているウォン・ペイチンさん(31歳)だ。彼女は半導体工場で3年間働いた後、バックパッカーとなり、約て9ヵ月の旅の後、環境NGOに参加した。
その活動を続けるうち、無添加の石鹸、マイクロプラスチックを使わない歯磨き粉など、直接肌に触れるものをつくることにたどり着いた。「きちんとした食べ物だけを選ぶのは難しいけれど、石鹸だったら選べる」というのが、独学でこの仕事を始めた理由だ。地元の農家をサポートしたいと、柑橘類など、地産の果物をうまく取り入れている。同世代の農家とコミュニケーションを取りながら、果物それぞれの特性を学んだという。
素晴らしい香りを持つ石鹸目当てにやって来る客の年齢層は幅広く、地域に環境や健康に対する意識が浸透してきているのがわかる。とはいえ、現場で中心になっているのはウォンさんら30代前半。このマーケットのオーガナイザーを務める女性も31歳。一度社会に出て、そこで気づいた矛盾点を自分たちの力で解消すべく立ち上がった姿が、まぶしかった。
マーケットのスタートは、この土地を所有するオーナーからの提案だったという。ペナンのグリーン活動は、このように、先進的な意識を持ち、社会に影響力のある人々が、若者たちをサポートする形で進んでいる。
経済性と環境活動を両立させることこそが、持続可能なビジネスにつながる。2015年にオープンしたホテル「オリーブツリーホテル」は、その典型だ。
一見、少し気の利いたビジネスホテルという印象のこのホテル。だが、細部に目をこらすと、オーナーらの強い意志がうかがえる。客室のアメニティ包装はすべて紙製。ペットボトルは見当たらず、ウォーターサーバーとグラスが置かれている。コンベンションセンターの目の前という立地から、客室に毎朝、新聞を届けるサービスは必須と思いきや、それは行わず、客にアプリを使ってダウンロードさせるスタイルを貫いている。
すべての客室には採光のための大きな窓があり、日中なら明かりをつける必要はない。照明も、ペナン州では初めての全館LEDだ。同ホテルはこうした取り組みの末、窓の大きさや壁紙の種類など細かい指標が設定された「グリーン・ビルディング・インデックス」認証を取得している。
共用部には、廃材を利用した教育的なオブジェも飾られている。たとえば、同ホテルの客室に捨てられていたプラスチックごみが、どうやって海を汚すのかを伝える展示はが、エントランス脇に置かれていたりする。
使い捨てされるプラスチックは非常に安価だ。これが生分解性プラスチックとなると、コストは約3倍になるともいわれている。それでも経済性と環境意識を同居させるため、同ホテルはゴミ箱に生分解性プラスチックバッグを採用している。そこに、ペナン州をリードするホテルであろうとする矜持が見えた。
▼ 後編に続く
●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Photo:Norio Kidera Text:Toshiya Muraoka Coordination:Wong Lai Yong Edit:Chizuru Atsuta