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「バスケット」「コーヒー」がルワンダにもたらしたもの【スペシャル対談:後編】
「バスケット」「コーヒー」がルワンダにもたらしたもの【スペシャル対談:後編】
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「バスケット」「コーヒー」がルワンダにもたらしたもの【スペシャル対談:後編】

ルワンダの女性たちが編んだバスケットと、高品質のルワンダコーヒー。同じ産地の異なる製品をブラッシュアップすることで、現地の人々の生活に変化をもたらしたRuiseBの小澤里恵さんとUCCの中平尚己さん。対談の後編は、二人が望むフェアな世界のかたちなどについて語り合っていただきました(後編)。

「子どもが学校に行ける」「薬が買えた」

――やりがいを感じるのはどんなときですか?

中平 ルワンダは暖かい気候で果物や農作物がとれるから、飢えて亡くなる人はほとんどいません。けれども農村部では、現金収入が少なく、健康保険に入れないため病院に行けずに亡くなるというケースが数多くある。ルワンダコーヒーの生産をサポートして日本に紹介することで、そういう境遇の人たちの生計向上に寄与することにやりがいを感じますね。

小澤 私もバスケットを編む女性たちから、「子どもが学校に通えるようになった」「薬が買えた」という話を聞くと、とてもうれしいです。ルワンダには、1994年の大虐殺事件の影響で未亡人が多くいます。そんな彼女たちの力になれればというのも、ルワンダバスケットを扱いはじめた動機のひとつですから。

中平 ルワンダは上下水道の普及が遅れてていて水がよくないので、感染症がなかなか減らず、平均寿命が延びない。コーヒーはもともとフルーツで、加工するためにはキレイな水が必要なんですが、降水量が少ないルワンダでは水の確保が大きな課題なんです。

小澤 水の入った大きなタンクを背負って運ぶ子どもたちの姿は、ルワンダのどこでも見られますよね。4〜5歳の幼い子どもたちが、「いったいどこまで、汲みに行ったの」と驚くような距離を、はるばる歩いて運んでいます。

中平 UCCが展開するカプセル式コーヒー「ドリップポッド」ブランドの専用カプセル「ルワンダ フイエマウンテン」の収益金の一部を使って、2021年にはルワンダのコーヒー農園や住宅地の近くの5ヵ所に取水場をつくりました。この5基で2万4000人の現地の人々が、清潔な水を使えるようになりました。

昨年10月に完成した取水場のひとつ。多くの人の生活が、清潔な水のおかげで一変した。

小澤 子どもたちの水汲み時間がなくなれば、学校に通うこともできますね。水で苦しんでいる姿を何度も見てきたので、「取水場」と聞くだけで、グッときてしまいます。

中平 水はSDGsの目標のなかでも、とても重要な存在。ルワンダだけでなく、コーヒー農園があるほかの国でも、この取り組みを水平展開していきたいと思っています。ブラジルなど中南米は、どんな田舎でも水洗トイレがあるほど、インフラが整ってきました。今後は、アフリカの国々を重点的にやっていきたいですね。

小澤 現地の人々の生活が、水で大きく変わりますね。

中平 弊社では、2022年の4月にサステナビリティ・フレームワークを定めました。「自然を豊かにする手助けを」「人々を豊かにする手助けを」の2本の柱のもと、2030年までに自社ブランドを100%サステナブルなコーヒー調達にしていきます。さらに2040年までに、カーボンニュートラルの実現を目指します。こうした取り組みには当然コストがかかりますが、サステナブルな原料が主流になれば、やがてコストも下がり、技術革新も進みます。そうすれば人々の意識も次第に変わっていくと思っています。

小澤 10年以上こうした活動を続けてきて、やっとやりやすくなった、とおっしゃっていましたよね。私もここ2年ほどで、人々の意識が大きく変わったと感じています。昨年から中平さんたちとコラボすることで、「企業ってこういうふうに動くんだ」「プロモーションはこうやって進めていくのか」など、とても勉強になりました。

中平 「ルワンダ フイエマウンテン」カプセルと、廃棄予定のコーヒーで染めたルワンダバスケットのセットを販売したところ、アッという間に完売してしまったのも、そうした取り組みの成果だと思います。

ドリップポッドの専用カプセル「ルワンダ フイエマウンテン12P」と「コーヒー染めのルワンダバスケット」。バスケットにはすべてテーマがあり、今回の商品は「未来」がモチーフにされている。

小澤 あきらめずに活動を続けていくと、こういうことが起こるんだなあ、とつくづく感じています。最近は「そんなに?」と驚くくらい、活動に興味をもってくれる人が増えてきました。コーヒーも、きっとそうですよね。最初は「ルワンダのコーヒー?」と半信半疑だった人も、実際に飲むと納得する。コーヒー好きな人はこだわりがあって、おいしいものに対する食いつきがすごいですよね。いいものさえ提供できれば、あとは話が早い気がします。

中平 消費する側へのアプローチは、もっともっとやらなければならないですよね。

一日25億杯も飲まれるコーヒーの原料をサステナブルなものに

小澤 消費者の動向を、現地の生産者にシェアすることも大事だと思っています。展示会やイベントのようすを写真や動画で見せると、「このディスプレイ、素敵ね」などと、みんなすごく喜んでくれます。

コーヒー染めのようす。鍋でコーヒーを煮出してサイザル麻を入れ、色がついたら自然乾燥させて完成。

小澤 コーヒーは貴重な収入源なので、ルワンダの人はほとんど飲まないんですよね。現地でバスケットのサイザル麻を染めるためにコーヒーを煮出していたら、近所の人々が「このいい匂いはなんだ」と、大勢集まってきたんですよ。

中平 コーヒーは世界中で、一日に約25億杯飲まれているそうです。すべてをサステナブルな原料に切り替えることができたら、世界は大きく変わるんじゃないでしょうか。

小澤 世界中がコロナ禍に襲われているいまは、転換するのにいい機会かもしれませんね。みんなが「本当に必要なものは何か」を見つめ直すための。

中平 近年では100年に一度クラスの災害が、毎年のように起きている。コーヒー栽培に関わっていると肌で感じるのですが、ここ10年くらい、季節が1ヵ月ほどズレてしまっていませんか? いろいろな意味で、いまは本当に転換期なのでしょうね。

text:萩原はるな

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