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『マシンガンズ』滝沢&赤プルの「いますぐやるべき防災術!」【後編】
『マシンガンズ』滝沢&赤プルの「いますぐやるべき防災術!」【後編】
COLUMN

『マシンガンズ』滝沢&赤プルの「いますぐやるべき防災術!」【後編】

日本海上で台風が発生し、予想外の動きを見せることが珍しくなくなっている昨今。河川の氾濫に土砂崩れ、大型地震など、私たちは日々、さまざまな災害のリスクにさらされています。そんななか行われたのが、ごみ清掃員であり、お笑い芸人の『マシンガンズ』滝沢秀一さんと、防災士の資格をもつ芸人・赤プルさんによるイベント。前回お届けした「ごみと防災」につづいて、いますぐやるべき防災術についてレポートします。

――前編「ゴミを減らして減災」はこちら――

命を守る第一歩は「土地の歴史を知る」ことから

滝沢さんが主宰する「滝沢ごみクラブ」によって行われた「防災の日」のトークイベント。かつてお笑い番組『エンタの神様』などで、芸名・赤いプルトニウムとして故郷・茨城の自虐ネタでブレイク。その後同業者と結婚し、いまは防災士の資格をもつ赤プルさんをゲストに迎え、「ごみと防災」をテーマにトークが繰り広げられた。

滝沢 ごみを減らすことが減災にもつながる、ということがわかっていただいたところで、赤プルに防災について話してもらいましょうか。そもそも赤プルは、なぜ防災士の資格をとったの?

赤プル キッカケは2015年9月の関東・東北豪雨。鬼怒川の堤防が決壊した大変な災害です。当時、私は東京でお笑い活動をしていて、地元の(茨城県)常総市には、大災害の3週間後に戻ったんです。ボランティアとしていろいろお手伝いするうちに、茨城県から、防災ネタをつくってほしいと言われて。調べるうちに、防災士の存在を知ったんです。しかも資格を認定する組織、日本防災士機構のHPにあるキャッチコピーが、「助けられる人から助ける人へ」だったんですよ。「何これ、かっこいい!」と思って勉強をはじめて、何とか取得できました。芸人としての滝沢さんにあこがれている人は少ないかもしれないけれど、いまは政府なんかもお仕事されている「ごみ清掃芸人」としての滝沢さんには、みなさん、あこがれていますよ。私も「防災士芸人」として、もっと認知されないと……!

滝沢 純粋なお笑い芸人としては、若手からもまったくあこがれられてないのかよ、オレは(笑)! まあ、ちょっとわかる気はするけどね……。と、それはともかく、赤プルは防災士としても、いろんな活動をやっているんだよね。

「滝沢ごみクラブ」のイベント第1弾として開催された「ごみと防災」。今後もさまざまなゲストを招き、いろいろな情報を共有していくという

赤プル そうなんですよ。よくぞ聞いてくれました! こう見えても、いろんな媒体に防災についてのコラムを書いたり、講演したりしています。「マイ・タイムライン」を普及させるためのリーダーとして、子どもたちとタイムラインを作成する活動なんかもしているんですよ。

滝沢 マイ・タイムラインって何? 初耳だなあ。防災に役立つ何かなの?

赤プル そうなんです。簡単に言うと、災害が起こる前に、いざというときに逃げ遅れないように準備しておく、時間割というかタイムテーブルみたいなものですよね。「タイムライン」って、もともとはアメリカのハリケーン対策として生まれたのを、行政が風水害対策としてつかっていたのですが、ひとり一人の備えとして使えるものにしようと、「マイ・タイムライン」をつくったようです。「逃げキッド」は国交省の下館河川事務所と常総市が、被災された方たちと一緒に開発した子ども向けのツール。ツールを意味する「キット」と子どもの「kid」、さらに1番の重要ポイント! 茨城弁の「逃げきっど(逃げ切るぞ)」にかけてネーミングしたみたいですよ。このツールでは、自分の家のリスクや川があふれる仕組みを知り、対処法を考えることができるので、結果、逃げ遅れを防いで、命を守ることにつながるんです。

滝沢 自分の家と地域のリスクね。たしかに「過去にこの土地に何があったのか」「どの程度の災害が起こったのか」という、自分が住んでいる土地の因縁を知ることはすごく大事。同じ歴史が繰り返される可能性って高いですからね。そのリスクを知れば、「じゃあ、命を守るために、何ができるのか」が見えてくるという。

2015年9月の関東・東北豪雨の際に、赤プルさんの家族が撮った避難中のワンシーン。茨城県では浸水した家屋などから、自衛隊のヘリコプターや地上部隊によって4258名もの人々が救助された

赤プル もちろん、そういうことを知ることもとても重要ですよね! 「逃げキッド」には、マイ・タイムラインを作成する準備として、「洪水ハザードマップや浸水想定区域図を見ながら、住んでいる地域の浸水深や浸水継続時間を調べてみよう」というチェックシートが入っているんです。

「逃げキッド」の内容。チェックリストを完成させていけば、おのずと災害時の「タイムライン(=時系列で整理された防災行動計画)」が作成できるようになっている

滝沢 ハザードマップって、近くの川が氾濫したときに、自宅やその周辺が浸水するかどうかが視覚的にわかるやつだよね。

赤プル そうです。想定される浸水の深さだけじゃなくて、実は「その水が何時間、家の中にとどまるか」がわかるものもあるんです。たとえば浸水深が0.5〜3mなら、「家の2階に避難すれば大丈夫かな?」とか、浸水継続時間が24時間なら「食料や飲み水、トイレを家族分準備しておけば何とかその時間しのげるな」などと考えることができます。ですから、みなさんにはまず、ハザードマップをチェックすることからはじめてほしいですね。

国土交通省の「重ねるハザードマップ」。市町村など関係各機関が作成した防災情報を、まとめて閲覧できる
 

日本全国、どの川が氾濫してもおかしくないいま、すべきことは

赤プル でも、こういう資料って、いざというときに急に見ても、見方がわからないと思うんですよ。だからふだんから、自分の関係する場所の状況を見ておくことがすごく大事。河川が氾濫しそうな場所とか浸水予想、土砂災害の予測まで、いまは何だってインターネットで見られるんですから。

滝沢 たとえば河川が氾濫してからも、わざわざ見にいかなくてもネットの定点カメラなんかで情報は得られるよね。

赤プル そうなんです。みなさん、氾濫した川とか田んぼとか、どんなに心配でも絶対に見に行っちゃダメですよ! さっき私が言った「逃げキッド」なんかの、マイ・タイムラインがつくれるツールは、国とか自治体のホームページから簡単にダウンロードできます。そこに記入していけば、あなたのご家庭オリジナルの「マイ・タイムライン」がつくれるんです! 雨風が強くなる前にすべきこと、状況を把握しつつ避難行動を開始すべきタイミングなど、あなた自身と、あなたの大切な人の安全を確保するためにできることが一目瞭然になるんです! いざというとき、何をすべきかがわかっていれば、逃げ遅れを防ぐことができるんです!

滝沢 なるほど〜。避難所とそこにたどりつくまでの時間、移動手段も把握しておく必要があるよね。浸水しない場所を理解していないと、逃げるルートはもちろん、避難場所もわからないもんね。

2017年に防災士の資格を取得した「防災芸人」赤プルさん。2019年には整理収納アドバイザーの資格も取得、整理収納や防災についての講演を精力的に行っている

滝沢 で、あらためて聞きたいんだけど、「災害にあう前に最低限知っておいたほうがいいこと」って、何があるの?

赤プル 災害の種類によって違ってくるんですが、水害の場合は、とにかく逃げることしかない、ということをまず知ってもらいたい。逃げるための準備を、キチンとしておくことが大事です。『何を持っていくのか』とか、常備薬なども忘れずに記入しておくことが大切。もし逃げ遅れた場合は、屋根の上で救助を待つことになりかねません。また浸水想定区域外に在住の方でも、地域が被災するとライフラインが止まってしまうので、在宅避難が長くなる傾向があります。在宅避難で絶対に必要なものは情報! テレビがつかなくなるので、ラジオやスマホと、それを動かすための電源、つまりポータブル電源とかが必要なんですね。次に明かり。これはランタンがオススメです。それから、非常用トイレ、水、食料、衛生用品など。しっかりと備えて、避難時もふだんの生活と変わりなく過ごせるのが理想的ですね。

滝沢 防災って、奥が深いねえ。今後、みんなで一緒に「マイ・タイムライン」をつくったり、水害ほかの備えなんかを考えたりする機会も、ぜひつくりましょう。

川の氾濫後に出された大量の「災害ごみ」。災害時には、こうしたごみの処理も問題のひとつになるという

――前編「ゴミを減らして減災」はこちら――

text:萩原はるな

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