ごみ削減が防災に直結!? マシンガンズ・滝沢&赤プルの防災イベントに潜入!【前編】
ゲリラ豪雨がもはや日常となり、ニュースで「観測史上、最も大きい台風になる」などの言葉を聞くことも珍しくなくなった昨今。2022年も続々と台風や低気圧が日本列島を襲い、多数の被害が報告されています。そんななか、9月の「防災の日」に行われたのが「ごみと防災」をテーマに据えたイベント。ごみ清掃員であり、お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんと、防災士の資格をもつ芸人・赤プルさんによる、面白くもためになるトークイベントに参加してきました。
災害時のごみ量はハンパない!
滝沢さんが主宰する「滝沢ごみクラブ」によって行われたこのトークイベント。第1回目のゲストは防災士の資格をもつ女性芸人の赤プルさんだ。一見、親和性がなさそうな「ごみと防災」。けれども、この2つは大いに関係があるという。
滝沢 ボクがごみ清掃の仕事をしてきたなかで一番衝撃的だったのが、令和元年(2019年)の台風19号のあとの光景。多摩川が氾濫して、東京・世田谷区と大田区で40戸の浸水被害が出たときのことでした。
赤プル あの台風の被害は、本当にすごかったですよね。東海から関東、東北地方と、あちこちで堤防が決壊して、大きな被害が出ました。
滝沢 浸水被害にあったご家庭がごみを捨てるわけなのですが、ボクはそのごみの多さに本当に衝撃をうけたんです。「40戸から出たごみ」と聞いて、ごみ清掃員として収集車で現場に行ったわけですが、ごみの量がハンパない! 道路の両脇が見渡す限り、ふだんは歩行者が歩いているところがごみで埋まってしまっていたんです。
滝沢 このときは、本当に壮絶でした。「水に浸かるなどしてつかえなくなったものは、全部ごみとして出していいですよ」という通達が自治体から各地域に出されていたみたいで、何でもかんでも捨てられているんです。ベッドやタンスなどの家具も、たくさんありました。
赤プル たしかに、この写真を見ると40戸分とは思えない量ですね。
滝沢 これらのごみをどうするかというと、ボクたち清掃人が粗大ごみを回収する大きな収集車に乗って、すべてを一時保管所に運ぶわけです。各家の床に敷いてあったタイルやカーペットなんかもごみとして出されていて、それらは水を吸っているから、めちゃくちゃ重い! 保管所は、そんなごみたちであふれ、20~30くらいの大きな山ができていました。そしてそこから、燃えるごみ、燃えないごみ、資源に分別をするという。
赤プル これまた、大変な作業ですね! 私が住む茨城県でもこの台風で大きな被害が出て、やっぱりごみもたくさん出ています。自治体によっては、ごみを運ぶ際に分別していたところもあったようですよ。じゃないと、滝沢さんたち清掃員の方々が本当に大変になっちゃう。
滝沢 ボクは「集める係」だったから、分別はしなかったんだけどね。でもたしかに、後からするよりその場で分別したほうが、効率はいいかもしれないね。ただ、ごみの量にもよるかな。
滝沢 収集もいっぺんにはできないから、ごみによって優先順位があるんですよ。最優先で回収する必要があるのが「畳」です。濡れた畳を放置しておくと、どんどん虫がわいてくるんです!
東日本大震災で回収が優先されたのは、食品工場から出た災害ごみでした。でないと、カラスや動物が集まってきて食ごみをあさり、大変な事態になるのです。ボクもコロナ禍で大量にごみが発生したときに、街じゅうがカラス天国になっていたのを見た経験があるんですよね。カラスがごみ袋を突っついては腐敗した食品ごみを周囲に撒き散らして……。するとそれを目当てに、今度はネズミが集まってくるという。
赤プル うわ〜、それはちょっと、大変ですねえ。
ごみへの意識が変われば、命だって救える!?
滝沢 ごみのなかには、電化製品もたくさんあるわけですよ。テレビや洗濯機は捨てるのにもお金がかかるようになりましたが、令和元年の台風19号の直後は「このときばかりは仕方ない」と、ほかのものと一緒に処分できたんです。
赤プル 冷蔵庫も捨ててありますね。テレビ、洗濯機、冷蔵庫の3つは、リサイクル法で捨てるときにお金がかかることになったんですよね。
滝沢 そうそう。で、問題は「これらのごみは一時保管所から、いったいどこにいくのか」ということです。一番多い可燃ごみは清掃工場にもっていって焼却するんですけど、すべてのごみを、すぐに処理することはできないんです。
赤プル ええっ。なんでですか?
滝沢 ふだんから清掃工場では、一日に処理できる限界量のごみを、毎日毎日処理しているから。そこに災害ごみが加わったら、処理できる余地がないんですよ。清掃工場は365日24時間、ず〜っと火を焚いてごみを燃やし続けているんです。物理的に、災害ごみなどイレギュラーなごみを処理できるキャパシティがない!
滝沢 ではどうするか。「今日は畳だけならなんとか」というふうに、ちょっとずつ毎日、災害ごみを処理していくんですよ。だから一時保管所のごみは、徐々に減っていくということになります。先ほど話したように、畳とか食品とか、優先順位の高いものから処理されていくんです。
赤プル うわ〜。なるほど、災害時はごみ処理の現場も多大な影響を受けるんですね。
滝沢 本当にそうなんです。キャパオーバーにならないためにも、家庭や企業などから出るごみを、ふだんから極力減らす必要があるんですよね。ごみを減らせば、焼却するときに出るCO2が減って気候変動を食い止めることにつながり、災害自体を防ぐことにもなる。災害とごみには密接な関係があるということがよくわかるでしょう。
赤プル 本当にそうですね。防災芸人の私から警告させてもらうと、ごみや余分なものが家にあると災害時、避難するときに妨げになるんですよ。ごみは、そういう意味でも防災と密接につながっているんです。
――後編では、赤プルさんによる「防災のすすめ」をお届けしますーー
text:萩原はるな