チョコレートの原料、カカオ豆ってどんな豆?
子どもも大人も、みんな大好きなチョコレート。日々、私たちをハッピーにしてくれる身近な存在ですが、その原材料は「カカオ豆」という農産物であることを意識する機会は少ないはず。そこで今回は、カカオ豆をクローズアップ。どこで育つ、どんな実なのか──さっそく見ていきましょう!
カカオの実が育つのは赤道周辺の熱帯雨林
チョコレートの原料は、高温多湿の熱帯にだけ生息するアオギリ科の常緑樹、カカオ(学名:Theobroma cacao L.)の実。このラグビーボールのような形をした実は「カカオポッド」と呼ばれ、堅い殻で覆われている。これを割ると、中には白い果肉に覆われた40~50粒ほどの種子が見える。この種子が「カカオ豆」だ。これを果肉ごと発酵させ、その後さまざまな工程があって、チョコレートができるのだ。
カカオの樹が育つ地域は通称「カカオベルト」。北緯20°から南緯20°の、赤道周辺エリアだ。しかも海抜30〜300m、年間平均気温が約27℃、年間降雨量は1000ミリ以上と、さまざまな条件を満たしていないと生育しないという。
それらをクリアするのは、西アフリカのコートジボワールとガーナ、中南米のエクアドル、東南アジアのインドネシアなど。カカオ豆の主要産出国はコートジボワール、ガーナ、エクアドル、カメルーン、ナイジェリア、インドネシア、ブラジルで、この7ヵ国が世界生産量の90%近くを、アフリカが同77%を占めている(2020-21年 国際カカオ機関ICCOカカオ統計より)。
カカオの樹は、整然とカカオだけが植えられたいわゆる「畑」ではなく、熱帯雨林でさまざまな木と共存しているのが一般的。半日陰を好むため、周辺に日光を遮ってくれる大きな樹「シェードツリー」が植えてあるカカオの森も少なくない。
カカオ豆には、大きく分けて3つの品種がある。ひとつめは、有史以前から生息していた「クリオロ種」。メキシコ南部やグアテマラなどで栽培され、アステカの皇帝もその豆をドリンクにして愛飲していたとか。いまでも現地では、飲用する文化が残っているという。病害虫に弱いため栽培が難しいものの、苦味が少なく高品質。独特のナッティ感があり「フレーバービーンズ」として珍重されている、幻のカカオ豆だ。
2つめが アマゾン川上流域、ベネズエラのオリノコ川エリアに起源を持つ「フォラステロ種」。成長が早く害虫に強い、比較的育てやすい品種だ。ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、ブラジルなどで見られ、渋味と苦味が強いカカオ感が特徴とされる。
3つめの「トリニタリオ種」は、クリオロ種とフォラステロ種が自然交配して誕生した。カリブ海のトリニダード島で生まれたことから、その名がつけられた。2種の特徴を兼ね備え、育てやすく味がよいのが特徴。中南米やマダガスカル、ベトナムで栽培され、世界のカカオ生産量の10〜15%を占めている。
ホワイトチョコレートがチョコレートであるワケ
原産地から届いたカカオ豆は、選別してローストされ、砕いて皮などを除き、「カカオニブ」になる。これをすりつぶしたものが「カカオマス」で、ココアバターや砂糖、ミルクを加えるとチョコレートができあがる。
カカオマスとココアバター、砂糖、乳製品をどんな割合で組み合わせるかによって、完成するチョコレートが変わる。大人っぽい味わいの「ダークチョコレート」はカカオマスとココアバター、砂糖が基本。ここに乳製品を加えたものが、おなじみの「ミルクチョコレート」だ。いっぽう「ホワイトチョコレート」は、カカオマスが入っておらず、ココアバターと砂糖、乳製品でつくられている。
カカオマス、ココアバター、砂糖、乳製品を混ぜ合わせたものは、大きなロールをつかって微細化され、じっくり練り上げられてなめらかになる。そこから温度調整をし、充填、冷却後に型抜きされて、チョコレートが完成するのだ。
赤道付近ですくすく育ち、人の手による丁寧な発酵・乾燥を経てやってきたカカオ豆。今日も世界各国のチョコレート工場で、それぞれの技巧を凝らされて製品化されている。
―――次回以降は、カカオ豆のそれぞれのふるさとをレポートしますーーー
参考文献:「チョコレート検定公式テキスト2022年度版(株式会社 学研プラス)」