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企業経営でも「脱炭素」は、もう待ったなし! 【前編】
企業経営でも「脱炭素」は、もう待ったなし! 【前編】
COLUMN

企業経営でも「脱炭素」は、もう待ったなし! 【前編】

2年前に日本政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表したことで、日本の企業も、それを無視できなくなりました。つまり「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」脱炭素経営が、社会から強く求められるようになったのです。2022年8月31日〜9月2日、千葉・幕張メッセで開催された「脱炭素経営EXPO秋(以下、EXPO)」は、そんな悩める企業経営者、担当者と、自家消費型の太陽光発電や蓄電池活用などを提案する専門業者とをマッチングする展示・商談会。そこでは注目すべきシステムが紹介されていました。

地球のためには「再生可能エネルギー」しかない

このところ気候がおかしい──。そう考える読者は多いだろう。この数ヵ月、日本だけでも、豪雨や巨大台風による水害、熱中症を招くすさまじい高温など、まさに災害だらけで気候「危機」といっていい状態だ。

異常気象の最大の原因は、われわれ人間の活動によって起こる地球温暖化だ。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書によれば、2011〜2020年の世界平均気温は、1850〜1900年より1.09℃上がっているという。そして、温暖化をもたらしているのが二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス。おもに火力発電など、化石燃料を燃やすことで大気中にこれらのガスが増えると、地球をスッポリ包む毛布のような役割を果たし、全体を暖めてしまうのだ。

そこで、脱炭素=カーボンニュートラルだ。「温室効果ガスの排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」というもので、現在、日本を含む124ヵ国と1地域が、「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」としている。だが、コトはそう簡単ではない。これをクリアするためには、火力発電による電気使用量を大幅に減らさなければならない。かといって電気をつかわない社会など、もはやあり得ない。私たちはどうすればいいのか。答えはひとつしかない。電力のつくり方を、日本の電源構成の76%を占める(2020年)火力発電から、CO2を排出しない太陽光や水力、風力、地熱などクリーンな発電に換えること、すなわち、再生可能エネルギー(以下、再エネ)への転換だ。

EXPOは年に3回開催。事前登録が必要なクローズドの展示会にもかかわらず、4万人以上が来場した

「再エネにはカネがかかる」。そんなイメージが、これまで企業の経営者を再エネ導入から遠ざけてきた。だが、科学技術の進歩などにより、コストは大幅に下がってきている。日本ではまだまだの点もあるが、国際水準では、太陽光は10年前の約1/6、風力は半分程度にまで安くなっているのだ。何より再エネは「燃料費」がかからない。ロシアのウクライナ侵攻などで世界的に燃料価格が高騰しているが、再エネには関係がないのだ。

EXPOは、まさにそんなタイミングで開催された再エネの見本市。企業が再エネ100%に取り組む際に、どのような手法や工程が考えられるのかを、わかりやすく展示していた。  

「脱炭素EXPO秋」会場内ではいくつものセミナーが開かれており、多くは「満員御礼」だった

環境省が推奨「PPAモデル」は初期投資ゼロ!

企業が再エネ100%を実現するための方法には、おもに以下の3つがある。

  • 自社敷地内(オンサイト)で発電し、自家消費する
  • 自社敷地外(オフサイト)で発電し、電力小売会社などから購入する
  • 省エネ対策とセットで実現する

ひとつ目は「オンサイトPPAモデル」または単に「PPAモデル」と呼ばれる。PPAとはPower Purchase Agreementの略で「電力販売契約」という意味だが、ややこしいことはこの際、置いておこう。要は、再エネを取り入れたい企業が、自社敷地内の屋根や遊休地をエネルギーサービス会社(以下、エネ社)に貸し、エネ社が無償でそこに太陽光パネルなどの発電設備を設置、発電された電力を企業が買ってつかう(自家消費)というビジネスモデルだ。

このモデルでは、太陽光パネルの設置、維持管理にかかる費用はエネ社が負担する。つまり、企業側は初期投資0円で発電設備を設置できるのだ。そのうえ、そこで発電した電力を利用(足りない分だけ従来どおり電力会社から購入)するため、電気料金とCO2排出の大幅削減が可能になるというわけだ。この方式なら初期費用がかからず、企業が手軽に再エネに取り組めるとして、環境省も大いに推奨している。

一方のエネ社側にもメリットはある。発電設備の設置費用をもったとしても、企業側は10年、20年という長期で安定的なPPA(電力販売契約)を結んでくれる。その契約期間内に、設置や維持管理にかかる経費ぐらいは簡単に回収できるのだ。

ARCの展示ブースには「予算がいらない!? PPAモデル」の解説パネルが

EXPOには、こうしたPPAモデルを推進する多くのエネ社が出展していた。そのうちの1社で、北海道を中心に販売を行っているARCの試算によると、ある企業が従来どおり電力会社から電力を購入し続けたときのコストは、1kWh当たり21.44円(電気料金+再エネ賦課金)なのに対し、PPAモデルで発電し、自家消費した場合は9.26円(20年間契約の場合)に抑えられるという。1年間に削減できる原油量も200ℓ缶で1916本分にのぼるそうだ。

(ARCのパンフレットより)

2019年に神奈川県で初めて実施されたPPAモデルは今後、企業による再エネ100%への取り組みの主流になるといわれる。後編では、オフサイトPPAなど、その他の手法について見ていくことにしよう。

text:奥津圭介

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