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[from Nice]ヴァンナチュールの魅力的な世界【後編】by Wakana Kawahito
[from Nice]ヴァンナチュールの魅力的な世界【後編】by Wakana Kawahito
COLUMN

[from Nice]ヴァンナチュールの魅力的な世界【後編】by Wakana Kawahito

●前編はこちら

ヴァンナチュールの由来とは

元々、ヴァンナチュールは、化学肥料や農薬をたくさん使って大量生産する安価なワインづくりに対する疑問から生まれました。20世紀初頭の南仏ラングドック地方は、工場で働く労働者向けの安いワインの生産や、アルジェリアなど海外産ワインの輸入拠点として有名でした。しかし、生産量を増やすために砂糖を加える悪質なワインづくりに疑問を持った農家やワイン輸入業者たちが、もっと“昔のやり方”で土地を傷めることなく、自然な状態でのワインづくりができないかと模索し出します。ヴァンナチュールには、単に環境に配慮したぶどう栽培、ワインづくりを行なうというだけではなく、小規模なワイン農家を守り、ワインというフランス文化を次世代に継承するための取り組みといった側面もあるのです。そういう観点からも、私はヴァンナチュールをなるべく選ぶようにしています。

環境に良いのはもちろん、経済的な面でも地元農家を守ることに繋がるからです。

アーティストのようなワイン農家

なるべく自然にワインをつくろうとしたら、その手間は半端ではありません。ぶどうづくりから発酵に至るまで、ほぼすべての過程が手作業。収穫の時期はほとんど寝られませんし、1年で休みが取れる期間も少ししかありません。それだけに、ワインに対する想いはひとしお。こだわりを持つ頑固オヤジのようなワイン農家も少なくありません。また、ヴァンナチュールのワイン農家はその哲学に共感して他業種から転職する人が多いのも特徴です。そんな多様なバックグラウンドやワイン農家の個性はエチケットに表れています。それゆえ、ロック音楽やインディーズ音楽のような雰囲気を醸し出しているのかもしれません。

どの街にも1軒はあるワインバー

フランスでは、2000年頃からヴァンナチュールが一部の食通たちの間で流行り始め、2010年代には徐々に一般層にも浸透しました。今では、どの街にも最低1軒はヴァンナチュールのワインバーがあるくらいです。それは、フランス人が食に対してオーガニックのものを求めるようになり、また地元フランス産のもの、小規模農家のものを選ぶようになったからです。ヴァンナチュールのバーはしばしば、サステナブルや環境に関心がある人が集まるハブのようになっていることがあります。環境問題や社会問題に関心がある人は柔軟な考えを持つオープンマインドな人が多く、ワイン片手に楽しみながら同じ価値観の人と知り合えるという楽しさがあります。

国産ヴァンナチュールも豊富に

ヴァンナチュールは、その土地や風土、ぶどう本来の味が強く出るワインです。そのため、大量生産型のワインに慣れている人からすれば、最初は飲みにくいと感じるかもしれません。けれども、慣れるとヴァンナチュール以外のワインが人工的な味で飲みにくいと感じる人もいるほどです。最近、日本でも国内産のヴァンナチュールが増えてきていますね。ぶどうの種類や生産地、製法などを知らなくても美味しいのですが、テロワール(風土)を知り、作り手の想いを知れば、より一層味わい深くなるでしょう。

川人わかな
Written by
川人わかな/ライター・コーディネイター

フランス・ニース在住。東京にて編集者として勤務後、2011年に渡仏。フランスを拠点に取材場所はヨーロッパ全域に亘る。主なテーマは、サステナビリティ、食、アートなどのライフスタイル。ウェブサイトや広告、TVの撮影コーディネイトも手がける。著書『世界の夢のパン屋さん』(エクスナレッジ)

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