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竹ブーム、大歓迎
竹ブーム、大歓迎
COLUMN

竹ブーム、大歓迎

松・竹・梅の選択肢があると、つい竹を選びたくなる。性格が控え目だからではなく、「竹組」だったからだ。通っていた小学校のクラス名がなぜか松・竹・梅で、たまたまわたしは1年から6年まで竹組だった。さらに幼馴染みの家が老舗の竹材店だったため、竹製品や竹置き場を見ながら育ったことも影響している。清廉な姿も好ましく、子供の頃いつか欲しいと憧れた楽器は笙。つまり昔から竹が好きなのだ。


ちなみにちっぽけな名誉? のために説明すると、このクラス分けは成績順ではない。そもそも松・竹・梅自体に本来、優劣はない。もともと寿司屋や鰻屋で「俺は特上」と頼む際にそこはかとなく漂う偉そう感や、「並で…」とつい小声になってしまう切なさを軽減するために、店側の配慮で適当にこれらの植物を当てはめたのが定着したものらしく、松が一番上等な植物だからというわけではないのだとか。わたしとしては竹・松・梅の順で構わなかったのに、残念な話である。

愛用品の一部。一番大きなざるは上京時に実家から拝借した。若い頃からこういうものが好きなのだけど、当時は「おばあさんみたい」「渋い趣味」と遠回しにセンスを批判されていた。

そんなわけで、身の回りにちょこちょこ竹製のものがある。今のところその多くはキッチンまわりのものだ。竹には抗菌・消臭作用があるため、台所用品や生活雑貨と相性がいい。これらは雑貨店で購入したり旅先でお土産代わりに購入することもあれば、フリマで運命的に出会ったり、胡散臭い古道具屋の店先に放置されていたのを救出したりと入手経路はさまざまだが、どれもお気に入りである。

大昔に浅草の仲見世で一目惚れした「ざるかぶり犬」。竹を犬にかぶせると「笑」になるところから、縁起物として安産祈願などに贈られたという。東京を代表する郷土玩具。

するとついに時代がわたしに追いついたのか(?)、近年竹はサステナブルな素材として人気なのだそうだ。海外のハイブランドも家具や内装に竹を取り入れるところが増えており、実は今、竹はちょっとしたブームなのだ。


もともと竹材として使用する部分以外にも筍に竹皮、葉と捨てるところがなく、しかも成長が早い竹はサステナブルという言葉が生まれる以前から、生活に欠かせない植物として重宝されていた。縄文時代から人は竹かごを使って暮らしていたし、古事記にも竹の櫛が登場する。竹が重要なモチーフになっている竹取物語を知らない日本人はいないだろう(竹から生まれたかぐや姫が3ヶ月で大人になるのも、竹が約3ヶ月で親竹になることとかけているといわれている)。それほどに古くから親しまれている竹だが、近年はサーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点からもますます注目を集めている。

そば用に購入した角盆(左)と六つ目編みの浅いかご。産地や竹の種類、編み方などを覚えるのも楽しい。

大量生産・大量消費の一方通行型であるリニア・エコノミー(直線型経済)を見直し、リサイクルを活用して廃棄までの寿命を長くするリサイクリング・エコノミーを経て、これからは生産・消費・リサイクルをうまく循環させ、環境負荷を低減して最終的に廃棄物をほとんど発生させないサーキュラーエコノミーを目指す時代になっているが、その材料として竹に注目が集まっている理由には、素材としての有用性とは別に「竹害(ちくがい)」という課題があることを、実は最近まで知らなかった。

お弁当箱用のかごも普段は湯のみなどを収納。国内産の竹製品の需要は減少しているが、サステナブルなライフスタイルに伴い、魅力が見直されている側面もある。

各地にある竹林は現在、ニーズの減少や管理者の高齢化や後継者不足もあって放置されたことで増殖し、周囲の里山の広葉樹林を侵食しているという。また、根が浅い竹の地下茎が増えることで地盤が弱くなり、土砂崩れなどのリスクも高まるのだという。古都の竹林にうっとりし、小物を買って満足していた身としては寝耳に水で、大好きな竹が「害」とまで言われていると知ってショックを受けた。サステナブル生活は1年生だけど竹好きは小1からだもん、などと偉そうに言っていただけに、自分の浅さにもがっかりした。

最近のお気に入り。岩手の手つき楕円ざる。バゲット入れにちょうどいい。竹=和という固定概念に縛られない使い方を模索していこう。

調べてみたら、なるほど林野庁のサイトにもちゃんと「竹の利活用推進に向けて」というページがあり、現状の報告とともに利活用の方法も詳しく書かれている。これによると、ざるやかご、建材など竹材として使う従来型の利用のほか、竹を原料にした新しい繊維やパルプの開発、さらに課題は多いものの竹をバイオマス燃料として利用する取り組みもおこなわれているという。

【林野庁:竹の利活用推進に向けて】

他にも短期的な効果は難しいものの、日本の竹工芸を世界に向けて販売しようという取り組みもおこなわれている。繊細な日本の「技」が活かされた美術や工芸は海外でも人気があり、竹の工芸品は特に欧米人に好まれるという。確かにわたしが国内でひとつひとつ丹念に編まれた竹の小物に魅せられ続けているのも、そこに高い技術や美を見出しているからだ。

白竹で編んだ手つき弁当かご。職人の技が生きていて美しいし丈夫だ。長く使い続けて飴色になっているが、それも魅力。

とはいうものの、竹は日本以外でも採れており、産地の約90%を占めるアジア諸国には同じ課題があり、可能性もあるだろう。次は日本だけでなく海外の竹の活用例についても調べてみたい(まさかの前後編?)

水谷美紀

エッセイコンテスト入賞を機にファッションの世界からライターへ。現在はおもに広告・PR業に編集も。小さめの映画と街歩きが好き。牛肉・はまぐり・鋳物で知られる三重県桑名市出身。

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