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「プロギング」に挑戦、してみたら
「プロギング」に挑戦、してみたら
COLUMN

「プロギング」に挑戦、してみたら

“今の暮らしを再考し、最高の日々をめざす“試行錯誤の日々を綴る『暮らしサイコウ』。4回目はちょっと聞き馴れない「プロギング(Plogging)」の話です。

子どもの頃から走るのが好きで、今も週に2回から3回、のろのろとジョギングをしている。といっても趣味である街歩きの延長で、走りながら新しくできた店をチェックしたり、好みに合う建物や綺麗な花を見つけたら立ち止まって写真を撮ったり、野良猫に出会ったら交流を試みたりするので、ほぼ散歩である。さらに最初の緊急事態宣言をきっかけに、走らない日も可能な限り毎朝一度は外に出て、軽くウォーキングをするのも日課に加わった。
走らずゆっくり街を歩くようになったら、道端にゴミがかなり落ちていることに気がついた。ジョギングだけしていた時はスピードがあるので目に入っていなかったのだ。ゴミは特に近所の川沿いに多く、空き缶やペットボトル、タバコの吸い殻、レシートやマスク、お菓子の袋、プチ宴会をした後の残骸などさまざまな物が無造作に捨てられている。

こういう物が落ちているのは大歓迎なんだけど……

実はトングを持ってゴミ拾いをしている人は結構いて、以前から見かけてはいた。ただ、だからといって「なら自分も」とは思わなかった。偉いなあ、などと、完全に他人事だったのだ。けれども毎日のように歩いていると、さすがに自分も何かした方がいいのではと思えて来た。その時、以前テレビで観た「プロギング」を思い出した。
プロギングはスウェーデン人のアスリートであるエリック・アルストロムが2016年に始めたエクササイズで、瞬く間に世界中に広がり、今ちょっとしたブームになっているという。綴りはploggingで、スウェーデン語の「plocka upp=拾う」と英語の「jogging」を合わせた造語だ。ジョギングしている途中でゴミを見つけたら立ち止まり、しゃがんで拾い、また走り出すため、ただ走るだけよりエクササイズになる点も人気の理由だ。実はテレビを観たすぐ後に一度やってみたが、その時は見よう見まねだったこともあってピンと来ず、それきり忘れていた。この機会に、もう一度プロギングをちゃんとやってみよう。


さっそく調べてみると、プロギングジャパンという日本公式協会があることがわかった。公式サイトを見ると「プロギング(plogging)はジョギングしながらゴミを拾う新しいSDGsフィットネス」だと説明されている。日本全国にパートナーの民間団体があり、各地で参加者を募ったプロギングイベントが開催されていたが、もちろん一人でおこなってもいい。大勢でわいわいやるのも楽しそうだけど、とりあえず近所のゴミを何とかしたい訳なので、まずはソロでプロギングに挑戦することにした。持ち物はゴミを入れる大きめのレジ袋と、料理用に買い置きしてあったビニール手袋。本当はトングや軍手も使いたかったのだけど家になかったので、あるもので。こんな風に初期投資ゼロで始められるのも手軽でいい。というわけで、まずは家の周辺3kmをプロギングしてみることにした。普段のジョギングの倍くらい時間がかかると試算し、所要時間30分の予定で家を出た。


軽やかに走り、ゴミを見つけたらサッとしゃがんでゴミを拾ったら機敏にパッと立ち上がり、また走る。走って、しゃがんで、走って、しゃがんで。ランと屈伸の組み合わせで、おお、なかなかハードな運動だな……となるのが、わたしが頭の中で描いたイメージであり、(たぶん)プロギングの理想的な姿だ。ところが家を出た瞬間、そのイメージはあっさり砕かれた。家を出て3秒後(!)、足元に記念すべき最初のゴミを発見。パウチの切り取られた上部分だ。「いきなりゴミ発見♡」と喜び勇んで拾い、さあ走るかと思った2歩目に、今度はタバコの吸い殻が。「やっぱりあるなあ」としゃがんで拾い、立ち上がったら、今度は目の前に紙おしぼりが。「都心だからゴミ多いな〜」と思いつつ拾ったら、次は空のジップロックが……

記念すべき(?)初プロギングのゴミ1号はジップ付きパウチの切り離された上の部分。切り離されるからこうして落ちるわけなので、パッケージデザインの課題ともいえる。

ん? なにか変だ。plocka upp(拾う)はできているけれど、joggingがまったくできない。これ、合ってる? これでもプロギングなんだろうか???
訝りつつ川沿いに出てみたら、ぱっと見にはそこそこ綺麗で、ようやく走れそうだった。よしよし……と思ったのも束の間、意外に動体視力があるのか、次々とゴミを発見してしまう。結局まったく走ることができず、ひたすらゴミを拾い続けることになってしまった。

川沿いだとこんな風に食べ物のゴミをそのまま残して行く人も。タバコの吸い殻のゴミが本当に多く、また、吸い殻をコーヒーの缶の中に入れてる物も多く、後で洗う時に大変だった。ダメですよ!
マスクのゴミも意外と多い。拾うのにちょっと躊躇してしまった。
1時間半やってぐったりしていたところに、ダメ押し的にこんなゴミ集団が。もう、泣いちゃう!

だが意外な発見として、ゴミ拾いは単純なだけに没頭でき、心が「無」になれる上に、宝探しっぽいレクリエーション的な面白さもあることがわかった(極端に汚れたゴミに遭遇しなかったということも大きいが)。プロギングが世界的なブームになっているというのも、環境や社会に良いことをしているからというだけでなく、単純に楽しいからという側面があるからだろう。


結果、たった3kmの距離をプロギングするのに、30分どころか、気づいたらなんと1時間半も費やしてしまっていた(普段のランなら15分〜18分)。ゴミの収穫はというと、持っていったレジ袋3枚がパンパンになるほど。こんなにゴミがあるなんて、という驚きと、こんなに拾ったぞ、という達成感で、初回のプロギングはイメージとはいささか違ったものの、大満足で終了した。途中で「なんでこんなものが?」という意外な落し物に遭遇し、やむなく拾って落とし主に届けたりといったハプニングもあったりと、なかなか刺激的な体験だった。

この日たった3kmの間に拾ったゴミ。
缶、瓶、ペットボトルをゴミ袋から出してみた。
拾ったゴミは持ち帰り、ラベルを剥がして洗って潰してまでがプロギング。 タバコの吸い殻、入れないでね!(2度目)

けれども正直、タバコの吸い殻など細かいゴミがあまりにも多かったのと、拾ったペットボトルや空き瓶・空き缶はすべて自宅に持ち帰ってラベルを剥がしたり水ですすいで潰したりと後始末が大量だったので、若干へとへとになってしまった。こんなに大変だったら頻繁にはやれないな……そもそもまったく走れなかったし……と弱気になって公式サイトを読み直したら、「よくあるご質問(Q&A)」コーナーに、こんな一文が。

『地元はゴミが多すぎて走れないです』

※筆者注:質問

そういった場所ではその日拾うゴミの種類を限定するのがおすすめです(今日は缶のみ拾おう等)。手間が省けるだけでなくペースも上がりよりフィットネスとして楽しめます。また一度に全てのゴミを拾おうとするのではなく、気持ちがいい範囲のゴミを持って帰るという意識も1つのコツです(1つでも拾えばヒーローです!)

※プロギングジャパン公式サイトより引用

ああ〜、確かに。すべてのゴミを拾えればいいけれど、完璧主義に頑張り過ぎて疲れてしまったりイヤになってしまっては本末転倒だ。若干そうなりかけていたのでこの一文に気づいてよかった。なら次は缶だけを拾ってみよう。そしたらただのゴミ拾いではなく、ちゃんとプロギング(エクササイズ)になるだろう。ゴミを拾うのは思った以上に楽しかったので、毎日や毎週やるのは無理だけど、気が向いたら、のスタンスで続けようと思った。なんだろう、プロギング、クセになりそうです。

協力:プロギングジャパン
公式サイト

1週間後に、今度は「空き瓶・空き缶・ペットボトル」だけに絞って再挑戦。同じ3kmの距離を、今度は30分で敢行。しかしこのゴミの数!
水谷美紀

エッセイコンテスト入賞を機にファッションの世界からライターへ。現在はおもに広告・PR業に編集も。小さめの映画と街歩きが好き。牛肉・はまぐり・鋳物で知られる三重県桑名市出身。

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