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歌手のUAがカナダの自宅を公開!「生命と自然に囲まれた暮らし」【後編】
歌手のUAがカナダの自宅を公開!「生命と自然に囲まれた暮らし」【後編】
VOICE

歌手のUAがカナダの自宅を公開!「生命と自然に囲まれた暮らし」【後編】

1995年のデビュー以来、圧倒的な存在感と個性豊かな美しい歌声で私たちを魅了してきた歌手のUAさん。20年ほど前から東京を離れ、自然豊かな環境で音楽活動をしながら、農的な生活を続けています。彼女が考える豊かな暮らしとは。家族と暮らすカナダの離島にある住まいを訪ねました。

▼前編はこちら

単にハッピーであるだけでなく
ウェルビーイングであるために

キッチンでお茶を淹れるUAさん。赤い壁は自らのアイデア。家のリノベーションはほぼ終わったが、カウンターテーブルをコンクリートにするかステンレスにするかまだ悩み中。大きな鉄板をガス台の上に置いてお好み焼きをつくることも

UAさんが自然とともにある暮らしを意識し始めたのは20年近く前のこと。長男(俳優の村上虹郎さん)をシュタイナー教育の学校に通わせていた頃だ。

「東京から神奈川県の藤野という場所に引っ越しました。自然界のことは以前からものすごく興味があって。歌のテーマを探しているなかで、もっと根源的なものを表現したいと思っていたので、それも大きかったと思います」

キッチンの道具でもよくつかうものは吊り下げて収納

現地で知り合った人たちのなかには、古民家を借りて、自ら田んぼや畑を手がけている人も。いまでこそ農的なライフスタイルが注目を集めているが、当時はまだ一般的ではなかった。

棚上のディスプレイにはデザイントイなどさりげなくセンスが光る。ヒンメリを吊るして

「実際に暮らしぶりを見せてもらったときに、なんてスマートな生き方なんだろうと思って。当時は自分の知識がなさすぎて、会話が成り立たなかった。一緒に山を歩き、いかに自然界のことを知らないまま生きてきたのか恥ずかしくなってしまったんです。そのときは歌手としてそれなりに成功していたし、子育てもして、自立しているつもりでいた。それがとんでもなく未熟な自分を思い知らされて。そこから自然農を勉強するなど、掘り下げていくようになりました」

グリーンハウスで育てているのは、スプラウトやハーブ類

2011年には家族で沖縄へ移住。北部の山原で3年半ほど過ごした。その後、夫の実家に一時戻り、カナダへの移住前にまずはどんな場所か見てみようと家族で2ヵ月間キャンプをしながら横断。最初に来たのがこの島で、最後まで一番印象がよかったという。子どもたちの教育にいろいろな選択肢があり、多様性が認められていることも大きかった。

果樹や花も育てているが、この夏は家族で日本に帰国したため畑作業ができなかった

「学校では人種差別に関してかなり教え込んでいる印象です。移民の国だからこそ、いろんな人がいるのが当たり前というのが基本にある。白人がファーストネイションを迫害した歴史をきちんと伝えていて、自分たちの祖先がしたことと受け止めている子どもたちがいて、すごいなと。あとは給食がない。いろいろな宗教の子たちがいるから、食文化は違うことが前提なんです。LGBTQの教育も小学生の頃からありますね。そして環境問題。子どもの時期から徹底的に教えることは大事なことだと思います」

収穫したばかりのエルサレムアーティチョーク。日本では菊芋と呼ばれる

この島では環境や人種差別などサステナビリティに対する考え方が日本よりも広く一般に浸透しているという。ただそれもUAさんのなかでは特別なことではなく、東京を離れた20年ほど前から、藤野でも沖縄でも大事にしてきたこと。土と触れ合い、多くの生命と一緒に暮らす。長年、自然とともにある生活を続けてきたからこそ実感することがある。お気に入りの森がある日突然、嵐で一変してしまったように、自然界においてわれわれは無力だということ。だから起きたことはそのまま受け止める。

放し飼いのガチョウたち

「人間は自然界と対峙するように経済を発展させてきたと思いますが、私たちがコントロールするなんてもちろんできないこと。人間も自然の一部であり、人間自身も環境そのものだと、より実感を持って考えられるようになりました」

畑の前にあるグリーンハウスは夫がつくったもの。ガラス張りの温室になっている

一方で、地球の気候危機が叫ばれている現実には人々の動きが遅いと感じる。

「現代人の意識がこのまま変わらないと、しまいには地球に見限られてしまうのではと思いますし、毎日自分が出すごみの量を見るだけで、正直もう間に合わないのではと不安になります」

それでも善意ある人たちの知恵を信じたいとUAさん。理想的な暮らしをすぐに実践できなくても想像力を働かせ、地球に思いを馳せることはできる。まず目を向けるのは、いまある暮らしと真摯に向き合うことなのかもしれない。

「単にHappyであるのでなく、Wellbeingであろうとするために、いまどうするか、何を選ぶのかと自分自身と対話すること。あわただしく過ぎていくなかでは難しいことかもしれませんが、どんな状況に置かれても、命ある限り常に学ぶ姿勢を忘れず、意識できるようでありたい。私はそう思っています」

PROFILE

UA うーあ
大阪府出身。1995年にデビューし「情熱」「悲しみジョニー」「ミルクティー」などのヒット曲で注目を浴びる。2020年にはデビュー25周年を迎え、2022年5月にEP「Are U Romantic?」をリリース。UAとは、スワヒリ語で「花」という意味を持つ。

●情報は、FRaU2023年1月号発売時点のものです。
Photo:Tomoyo Yamazaki Text & Edit:Chizuru Atsuta
Composition:林愛子

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