CHICO「ウェルビーイング——自分を満たすことの大切さ」
美しく健やかな肌と体を育むためには心身の調和が不可欠と考え、長年フランスおよび日本にてビューティメソッドを探求。その経験と実績をもとにエッセンシャルオイルや、セルフマッサージ・食事・呼吸法を含めたバイタリティー・コーチング®など、独自のメソッドでウェルビーイングを提唱してきた「SHIGETA PARIS」のCHICOさんと、夫のエマニュエルさんにお話を伺いました。
心と体の調和が
社会を変える第一歩に
「ブランドを立ち上げたのは、植物の癒やしの力によって人生を豊かにしてもらいたいという想いからでした。すべての人に自分自身が調和している=心と体が満たされているという状態を届けたくて。なぜならば、自分が満たされていないと、そこを埋めようとして外に探しに行き、妬みや僻みが生まれるし、誰かから奪ってしまうことになるから。でも満たされていれば、寛容さや思いやりが生まれ、他者との関係も調和する。つまり自分が調和していてこそ、まわりにも幸せを分け与えられるんです。だから環境問題や動物愛護、社会問題などの解決のためには、まず自分を満たすことが大切だと考えています」とCHICOさん。近年は、セルフラブやセルフエスティームといった言葉も注目されている。
「日本はとくに女性の人権問題が根深いですよね。女性たちががんばっているにもかかわらず、社会的地位がいまだに低い。女性たちの自立をサポートする意味でも、セルフケアの重要さを懸命に伝えてきましたが、ひとりでやっていてもなかなかラチがあかない。ならば、スペシャリストに教えてもらったり、同じ気持ちの人たちと活動したり、いろいろなレイヤーから伝えていくのがいいんじゃないかと。それで『スプリングステップ(springstep.jp)』というウェブマガジンを立ち上げました。ここを見れば信頼できる情報が手に入るし、未来のための選択肢やこれからの生き方のヒントがある、そんなサイトでありたいです」
新型コロナウイルスによって全世界の人々の暮らし方が変化したいま、あらためて感じるのは日仏の国民性の違いだという。
「日本でもかなり意識が変わったと思いますが、フランスではサステナブルやエコ、ウェルネスに関する個人事業がものすごくたくさん増えました。国全体で意識が高まっていて、地球の危機が迫っているとみんなが認識している。消費者が国家や常識を変えていくような国なので、『これは環境に負荷をかけているから買わない』『私の思想と合わない』というように、各自が意志をはっきりと示すんです」。こうCHICOさんが言えば、エマニュエルさんが頷く。
「政治への関心度の違いも大きいと思います。フランス人は日常的に政治に関心を強く持っていて、政治家の発言も懐疑的に捉え、自分で考える。自分の想いを実現するためには、道筋を立てて闘うのが基本。でも日本は波風を立てない気質の人が多く、人の意見はとりあえず受け入れる。仏教思想の影響なのかもしれませんね」
母国が違う夫婦だからこそ、ブランドやウェブマガジンを通して、双方の文化、風習、国民性などを踏まえたよい面を伝えていこうと試みている。
「フランスでは企業も個人も環境や人権などについての考えが根本にあって当たり前。日本はその点で遅れているかもしれません。でも日本は健康や美容に対しての意識がヨーロッパよりもずっと高い。ウェルネスは追求するほどに、まわりのウェルネスなしに成立しないと気づく。SHIGETA PARISのものづくりも、環境や植物へのリスペクトがなくてはできないんです。だから私たちは、日本のウェルネスへの意識の高さや知見をヨーロッパに伝えていきたい。そして、オーガニックやSDGsに対するヨーロッパのスタンダードを日本へ伝えていくことも役割だと考えています」
ブランドの設立以来、「驚きのある、オーガニック」を叶えるコスメによって、女性の心と体をケアしてきた。
「オーガニックという概念が世の中に浸透したぶん、少しだけ取り入れている、というブランドも増えてきました。もちろんゼロよりはいいけれど、知識のない消費者が見分けられないことは問題。だからといって、『私たちは本質的に取り組んでいるブランドです!』と声を張り上げるのも違うと思う。啓蒙活動をすることで、消費者の意識が変わり、大企業が変化し、社会が成熟していくことを願っています。『スプリングステップ』もその試みのひとつ。私たちが社会を変えていくきっかけになれたら、うれしいですね」
PROFILE
オリビエ・エマニュエル&チコ・シゲタ
現在、子育てのためにタイに移り住み、フランスと日本の3拠点で活動中。双子の娘が着ているのは、海洋プラスチックをリサイクルした繊維でできたワンピース。プロダクトは、パリ市内の自社ラボと工場にて植物の力と、開発エキスパートの知恵と知識を融合して生み出している。
●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
Text:Shiori Fujii Edit:Chizuru Atsuta