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伝説の「東大ママ」が明かす「子どものやる気を引き出すコツ」
伝説の「東大ママ」が明かす「子どものやる気を引き出すコツ」
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伝説の「東大ママ」が明かす「子どものやる気を引き出すコツ」

「子どもがちっとも勉強しない」「まったく成績が上がらない」などと悩んでいる親は多いでしょう。「ついイライラしてしまい、キツい言葉をかけてしまう」という話もよく耳にします。けれどもそれは、親が自己嫌悪に陥るだけでまったくの逆効果。では、「サステナブルな教育」のためには、いったいどうすればいいのか。『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』(講談社ビーシー)の著者である杉山奈津子さんに伺いました。

100点をとれたことではなく、100点とれるぐらい、がんばったことをほめる

「模試の偏差値29」から独学で東京大学理科二類に合格、薬学部を卒業した杉山奈津子さん(40歳)。現在は作家、イラストレーター、心理カウンセラーとして活躍しながら、学習塾「杉山塾」の代表として小学生から高校生までの指導にあたっている。そんな彼女は日々子どもと接するうち、「子どもたちをもっと伸ばしたい、そのために親に知ってもらいたいことを書こう」と考えたという。

「子どものやる気って、親の言葉にすごく左右されるんです。たとえば100点をとって帰ってきたら、100点とったことをほめるのではなく、『100点がとれるほど努力をしたこと』をほめることが大切。点数をほめると、悪い点をとったときに、『100点を取れなかった自分には価値がない』と思ってしまう危険性があるんです」(杉山さん、以下同)

点数が振るわなかったテストを隠そうとする子どもがいるが、杉山さんの小学3年生の息子は、どんな点数のテストでも自分から見せにくるという。

「点数が悪かったとしても、とりあえずできているところを『これができたんだ、えらい』とほめる。そのうえでできなかったところは『ここは失敗しちゃったんだね、でもこれで、今度は間違えなくなるね』と次につなげて、子どもの気持ちを上げていくんです。失敗は残念なことではなく、わからないことの確認にすぎませんから。

『こんな点数しかとれなかったの』と言いたい気持ちはやまやまですが、そうやって叱ったところでどうにもなりません。そうではなく、できた問題に対して『これはどうやって解いたの?』と聞いてみると、子どもは『これは、こうなんだよ』と優越感たっぷりのドヤ顔で解説してくれますよ。すると親子関係もよくなりますし、子どもの自己肯定感も高まります」

『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』(講談社ビーシー)より。イラストやマンガも、杉山さんが手がけている。

「なんで勉強をしなければならないのか」「こんな計算、日常生活では使わないじゃないか」などと、子どもに反発されたことがある親は多いはずだ。そんなときには、どう答えたらいいのだろう。

「勉強は、将来やりたいことができるようになる手段。医者になりたかったら医学部に入らなければならないし、宇宙飛行士になるためには語学や宇宙についての知識が必要ですよね。つまり勉強は、将来自由を勝ち取るための手段であり、そのための努力なんです。ですから子どもには、『これがわかるようになれば、将来稼げるよ』とか、『もっと勉強すれば、やりたいことができるよ』などと言ってあげるといいんじゃないでしょうか」

子どもに言っても最初はピンとこないかもしれないが、勉強をすることで脳が発達し、論理的な思考や理解力を磨くことができるのはたしかだそう。頭を鍛えることで柔軟な考え方も身につくため、やはり子どもの頃の勉強は重要だといえる。

「ただし誘惑が多い現代では、スマートフォンに気をとられて勉強に身が入らない子どもも多いですよね。そんな子におすすめなのが『5秒ルール』。たとえば勉強している間は、鍵のかかる箱に電源を切ったスマホを入れておくのです。するとスマホを取り出して使うまでに5秒以上かかるから、ついつい、パッとスマホに手を伸ばす……なんてこともなくなるわけです。

逆に「5秒」を利用する『事前の5秒ルール』もあります。これは次の日に、5秒かけずに勉強に取りかかれるテクニック。前日に勉強したら教科書やノートを片づけずに、『明日やるページ』を開いたまま机に置いておくんです。私もよく、パソコンで書きかけのワードファイルを開いたままデスクトップに置いておくんですが、そうすると、次にパソコンを開いたらすぐに作業に取りかかれて、とても効率がいいんですよ」

中学受験に成功してから大学受験までの6年間は、まったくやる気が出なかったと杉山さん。「私の両親は、そんな私を責めたり怒ったりせず、見守ってくれていました」。

子どものやる気をアップさせるには

気が散って勉強に集中できない子どもには、報酬を与える「エンハンシング」が有効だという。

「刺激を高めてやる気を引き出す方法です。わが家でも、『これが10日続けられたら、新しいプラモデルを買ってあげるよ』などと実践。すると、『じゃあ、がんばってみる』とモチベーションがアップするようです。『これが終わったらゲームが20分できる』とか『おいしいケーキが食べられる』とか、報酬はなんでもOK。ただ、もともとやる気がある子には逆効果なので気をつけましょう。勉強自体がモチベーションになっていたのに、報酬が与えられることで、それが原動力にすり替わってしまうからです」

「勉強しなさい」「片づけなさい」と子どもに言ったところ、「いまやろうと思ってたのに……やる気がなくなった」と返されたことがある親も多いはず。そもそも人間には、「自分の行動は自分で決めたい」という生まれついての意識があるそうだ。

「『やりなさい』と言ったところで、やりませんよね。それよりも、子どもの気持ちをのせることが大切。『ここはすごくできるんだね』と気分を上げて、『今日は国語と算数、どっちからやるの?』などと選択肢を与えてあげるといいと思います」

――次回は、教育格差や学力を伸ばす秘訣について伺いますーー

杉山奈津子■1982年、静岡県生まれの作家、イラストレーター、心理カウンセラー。独学の勉強法で1浪後、東京大学理科二類に合格。中学生の頃から双極性障害(躁うつ病)に苦しみ、大学卒業後にも闘病を経験した。2020年、静岡市内に「杉山塾」を開き、代表として小学生から高校生までの学習指導にあたる。『鬱姫なっちゃんの闘鬱記』(講談社) ほか、10冊以上の著書がある。

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