「エコバッグは本当にエコなの!?」と悩んだら「ルーパック」!
「エコバッグは本当にエコなのか」
そんな疑問からはじまった新規プロジェクト「ルーパック(Loopach)」。買い物をする際、レジ袋を購入する代わりにルーパックのタグがついたエコバッグを使用すると、環境や教育、福祉分野などの社会活動団体に寄付ができる仕組みです。2021年6月にはじまり、加盟店が100店舗近くにまで増えたルーパックの狙い、革新性を紹介します。
エコバッグを繰り返し使う“だけ”で寄付できる
環境に配慮したエコバッグのあり方を目指す「ルーパック」は、買い物時に専用タグつきエコバッグを使うと、アプリを通じて関心のある社会課題が選べ、寄付できるというプロジェクトだ。
全国の取り扱い店舗や公式オンラインストアで販売されている専用エコバッグのほか、一部の加盟店で販売しているルーパック機能つきエコバッグも利用できる。これらのバッグには、洗濯にも耐える電子チップ・NFCが埋め込まれた「ルーパックのタグ」がついている。
使い方は簡単。まずは専用アプリにアクセスして、ルーパック公式オンラインストアまたは加盟店で購入したエコバッグを「マイ・ルーパック」として登録。 以後、加盟店で買い物する際にエコバッグを使ったら、その証として専用端末でタグをスキャンする。これで「1アクション」がカウントされる。このアクション数に応じてアプリで「花束」と呼ばれるポイントを獲得し、花束を特定の非営利団体などに贈ると、ルーパック基金を通じて各団体に寄付が行われる。
寄付の財源は、各事業者(加盟店)が負担する。ルーパックのタグのスキャン回数をレジ袋の枚数に換算し、その分の金額(1枚1〜4円程度として計算)をルーパック基金に支払う。基金に貯まった金額の50%はルーパックの運営に使われ、残り50%が各団体に寄付されるのだ。
布袋は数百、数千回使わないとエコにならない
ルーパックが生まれた背景について、同プロジェクトを運営する株式会社MILKBOTTLE SHAKERS(ミルクボトルシェイカーズ)の代表取締役・喜多泰之さんは、「現状のエコバッグのビジネスモデルは、極端な言い方をすると『エゴ』バッグになっている」と話す。
「2020年7月1日にレジ袋有料化がスタートしてから、多くの企業は自社で製作したエコバッグをいかに多く販売するかに注力しています。毎年、新しいデザインのバッグを販売したり、有名アーティストとコラボした製品を販売したり。でも、ひとりの顧客が何種類ものエコバッグを持つようになれば、エコバッグひとつあたりの使用回数が減り、廃棄されるバッグが増えていくかもしれない。それってナンセンスだと思うんです。
ルーパックは、ファッション業界の課題である薄利多売のマーケットに対して、環境・社会の持続可能性を追求するアイディアのひとつになるのではと思っています」(喜多さん、以下同)
2018年にデンマークの環境食品省環境保護機関が発表したレポート「Life Cycle Assessment of grocery carrier bags」(=買い物袋のライフサイクルアセスメント)を見ると、エコバッグは繰り返し使わなければ環境への貢献につながらないことがわかる。
「レジ袋を1回使ってゴミ袋にした場合に発生する環境負荷を基準とすると、紙袋は11回、一般的な布袋は840回、オーガニックコットンの袋にいたっては2376回も使用しなければ、レジ袋よりも環境負荷を抑えることができないと、同調査では報告されています」
喜多さんは、石油産業に次いで世界で2番目に環境負荷が高いといわれるアパレル業界に長く身を置くなかで、既存のビジネスモデルを変革する必要性を切実に感じていたという。
「まだ世の中にない、本質的に持続可能な仕組みをつくりたいと考え、2年ほどかけて誕生したのがルーパックです。事業者だけではなく、消費者も巻き込んで市場全体にこの仕組みを広げることができれば、エコバッグにとどまらずファッションアイテム全体に新たな付加価値を与えられるのではないかと思いました」
「楽しくてソーシャルグッド」を設計したい
ルーパックをリリースしてからというもの、嘉多さんは全国版経済新聞はじめ大手メディアに多数取り上げられ、環境省×東京都のイベントにも登壇した。ルーパックの認知度がジワジワ高まっていると、手応えを感じている。
現在は、全国のスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどに、どうすればルーパックが導入されるのか、ディスカッションの真っ最中だという。早ければ2022年内に、近所の店でルーパックが導入される可能性もありそうだ。
だが、保守的な傾向がある日本では、導入の壁は高いと喜多さんは言う。
「現状は、まさに草の根といった感じで、知り合いなどツテをたどって理念を伝え、共感を得ることで、導入企業を増やしているところです。『いいね』とおっしゃる方はたくさんいるのですが、そこからもう一歩、踏み出していただくのは容易ではありません。難しさを感じることばかりですが、事業のゼロイチはそんなものですよね」
現状では、多くの消費者の目に触れるところにルーパックを取り入れていくのが最優先事項とのこと。将来的にはテクノロジーを融合し、消費者が楽しんでルーパックを継続できるようなものをつくりたいという。
「アプリ内で自分のエコバッグ(マイ・ルーパック)やマイボトルに名前をつけられるのですが、いずれはそれらを使うごとに自分のアバターが育つといった仕様ができればおもしろいな、と。アバターが育つことで、エコバッグが傷んできても捨てずに、直して使おうかな……といった具合に、長期間使い続けたくなる動機づけになればいいなと考えています」
「袋は、いりません。ルーパックで!」
そう言ってタグをスキャンし、買い物帰りに寄付をすることがクールだと感じられるような文化を醸成したい。それが、ルーパックに込めた喜多さんやメンバーの思いだ。
取材・文:小林香織 編集:大森奈奈 写真提供:ルーパック