ニーズに合わせて進化中の「ファッションサブスク」最前線
昨今、さまざまなところで、価値観のベクトルが「サステナブル」に向いているけれど、ファッションも然り。ファストファッションの台頭で「洋服はワンシーズンで使い捨て」なんてときもありましたが、いまは、「使い捨ては、もうやめよう」という風潮が広がっています。そんななか人気なのがファッションレンタル。とくに注目されているサブスクリプション型の最前線をご紹介します(前編)。
ハイブランドを着こなすためのコーディネート相談ツール
ファッションの新しい消費のスタイルとして、昨今、注目されているのが、サブスクリプション(定額料金を支払って利用するサービスやコンテンツ)型のファションレンタルサービスだ。
「AnotherAddress(アナザーアドレス)」も、そのひとつ。大丸松阪屋百貨店がはじめたもので、サブスクファッションレンタルサービスでは日本の百貨店初となる。
「立ち上げたのは、2021年3月。コロナ禍でのスタートとなりましたが、タイミングとしては悪くありませんでした。家にいる時間が長くなったせいで、クローゼットの中身を整理したり、不要なものを処分したりして、『自分にとって本当に必要なものはなんだろう』と考え、そしてサステナブルを意識するようになった人は少なくないはずです。私たちが立ち上げたサービスは、もともとサステナブルな価値観のなかでつくられているものですから、みなさんの思考とうまくマッチしたのでしょう」(大丸松坂屋百貨店・同事業責任者の田端竜也さん、以下同)
利用者からは、「これまで、『ワンシーズン着て飽きたら捨てる』を繰り返していたが、その罪悪感から解放された」といった声が多く寄せられているという。
「コロナ禍では、外に出て人に会うのは貴重な時間。だからこそ、しっかりオシャレしたいという方が増えているのです。ブラウスひとつとっても、派手というか、華やかなものへのニーズが高まっています。みなさん、ファッションにメリハリをつけたいと望んでいらっしゃるのかもしれません。そんな方々に、ファッションサブスクは支えられているのではないでしょうか」
取り扱いブランド50でスタートしたサービスは、1年後の2022年3月には、2倍以上の113ブランドと拡大、登録顧客数は累計で約9000名になった(22年6月現在)。おもなブランドは、MARNI、See By Chloé、Weekend Max Mara、BEIGE,、JOSEPH、Y’sなど。利用者の年齢層は20代から70代と幅広く、中心は40代だ。ファッションが大好きな「ファッションラバー」ではなく、かといってファッションに興味がないわけでもなく、「普通にオシャレに興味がある中間層」の人たちだという。
「かつては中間層でも、ちょっと高い洋服を着たりしてオシャレを満喫していましたが、いまは中間層の人たちに『高い洋服はファッションラバーが買うものよね』といった感覚があるように思います。でも、そうじゃないんだよ、ということを知っていただきたい。ちょっと値の張る洋服を着てみることで、その服の持つ力を楽しんでほしい。このサービスでハイブランドを扱っているのは、そんな思いがあるからです」
ハイブランドの洋服には、田端さんのいうようにある種の「力」があるのは事実だが、個性が強く、着こなしの難易度が高い傾向にあるのもたしかだ。
「『こんな個性的な洋服はどうやって着ればいいの?』『どんなアイテムと合わせればいいの?』などの質問もたくさん寄せられるんですね。そこで、コーディネート相談ツールを試験的に導入しました」
導入したのはコーディネート相談ツール「STYLISTA(スタイリスタ)」。手持ちのアイテムやレンタルするアイテム同士のコーディネートを、実際に店舗でそうするように、スタイリストに相談できるウェブ型の接客サービスだ。
「スタイリストへの相談を通じて、レンタルのハードルを下げること、そして、コーディネートのイメージが具体的になることで、レンタル後の返品率が下がることを期待しています。導入から間がないため、まだ統計的に見るほどのデータは出ていませんが、利用者は徐々に増えていて、お客さまがちゃんと反応してくださっていることはたしかです」
今後は、コーディネート相談ツール導入の具体的な効果を見ながら、ユーザー同士がコミュニケーションできるシステムにもチャレンジしていきたいという。ファッションサブスクサービスは、今後もさらに広がり、充実していきそうだ。
ーー後編に続くーー
text:佐藤美由紀