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ニット工場で廃棄される「残糸」で作った高品質な毛糸「一期一会糸」
ニット工場で廃棄される「残糸」で作った高品質な毛糸「一期一会糸」
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ニット工場で廃棄される「残糸」で作った高品質な毛糸「一期一会糸」

ニット製品の生産に関わる現場では、「残糸」「処分糸」と呼ばれる使い道のなくなった毛糸が出ます。これらの糸は廃棄されることが多く、1つの工場から年間100kg以上の糸が廃棄処分されるケースも。もちろん、廃棄には費用がかかります。

「一期一会糸」は、ニット製品を作る工場などで廃棄される残糸を買い取り、作られた引き揃え糸です。色や風合いの異なる複数本を1本の糸に仕上げるため、まさに“一期一会”の品となるのが特徴。

「製造販売を手がけるKnittingbirdでは、『ニットで世界をやさしく』を目指し、気軽に編み物が楽しめるちょっぴり変わったオリジナル毛糸の開発・販売や、ニットの知識を深める情報を発信しています。一期一会糸の取り組みは、2016年にスタートしました」(Knittingbirdを主催するニットデザイナーの田沼英治さん)

複数の糸からなる一期一会糸は、一つひとつ雰囲気が異なる。工場から届いた残糸を活かして作るため、その都度悩みながら企画・製作をしているそう。

一期一会糸が誕生したきっかけは、田沼さんが残糸の廃棄をなくしたいと考えたことでした。

「ハイエンドのニット工場や紡績工場と取引をしていたこともあり、その残糸には、市販では出回らないような珍しいもの、高品質なものが存在していました。そこで、取引先のニット工場で出た残糸を買い取り、取引先の負担を減らすと同時に、品質の高い毛糸を編み物が好きな方に届けられるのではと考えたんです」(田沼さん、以下同)

さまざまな色味、風合いの糸を用いて、かつ編み物ユーザーのニーズに合ったものに仕上げるのは容易ではなく、企画から販売までには1年の月日を要した。

「単純に毛糸がかわいいというだけでなく、企画の背景や思い、一期一会糸というネーミングにも賛同してご購入いただき、毛糸屋冥利に尽きます。オンライン販売がメインなこともあり、実際に手に取って触れるのが難しいなかでも、ありがたいことにたくさんの方にリピートしていただいています」

「現在は、編み物をする方だけでなく、手織りをする方やアクセサリー作家さんにも支持されています」 そのため、パッケージや量など、ユーザーのニーズに合わせて販売方法を日々、試行錯誤しているそう。
ニット工場から届いた残糸。Knittingbirdでは、ほかにもシャトル織機から出たコットン100%の「ふさ耳」や、傘に使用するナイロン生地の「三巻テープ」といった廃材も買い取り、毛糸として販売している。「毛糸にしたら面白いだろうなと思うものは今後も増やしていきたいです」(田沼さん)。

「一期一会糸の最終目標は、残糸をなくすこと」と話す田沼さん。残糸がある限りは販売を続けると前置きしつつ、ニット工場や糸商社が努力するロスの削減がいつか残糸ゼロにつながることを願っています。最大のロス対策は、再利用ではなく、ロスをなくすこと、なのです。

取材・文/有馬ゆえ

Knittingbird

「ニットで世界をやさしく」をモットーに、ニット専門ウェブマガジン「Knittingbird」の運営、オリジナル糸・キットの研究開発、販売、編み物のワークショップなどを行う。

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