破棄されていたパイナップルの葉が素材に。創業60年の老舗NADAYA「ピニャーレ」
革製品を作るものとして、革を離れる。2020年、創業60年の老舗革製品屋NADAYAが、こんな宣言とともにパイナップルの葉を素材にして作るシリーズ「ピニャーレ/pinamore」を発売しました。
近年、SDGsへの社会的関心が高まる中、NADAYAは「作る人でいると同時に遺す人でもありたい」という思いを強めたそう。
「持続可能な目標を達成するために、自分たちは何を“遺す”べきなのか。それを模索しているときに、パイナップル由来のヴィーガンレザーに出合いました」(NADAYA ピニャーレ担当の武山大輝さん)
NADAYAがパイナップル由来の素材を選んだ理由は2つ。1つは、ヴィーガンレザーのなかでも、元となる植物成分が7割と圧倒的に多いこと。もう1つは、素材の元となるパイナップルの葉に他の再利用法がなく、これまで廃棄にしかなってこなかったことです。
「“遺す人”を目指すうえで、ヴィーガンレザーのなかでも、可能な限り環境に寄り添った素材を選びたいという思いがありました」
とはいえ、長年、革製品を扱ってきた職人たちをしても、商品開発は難航しました。パイナップル由来のヴィーガンレザーは、革とはまったく異なる素材だからです。
「素材に合った作り方、加工の仕方を考えるうち、素材の厚み調整、縫製の箇所といった初歩的な部分から見直すことになりました。今まで革で作ってきたデザインでも、新しいものを一から作る気持ちで取り組まなければなりませんでした」
そして、2020年12月、第1弾である長財布をリリースするも、瞬く間に完売。「正直、予想以上の反響に驚きました」と武山さん。現在も、予約での販売となっています。
今後は、小物以外のラインナップを増やしたり、志を同じくするパートナーとコラボしたりといった試みも視野に入れています。革のよさを知り尽くした老舗が切り拓く新しい未来に期待です。
取材・文/有馬ゆえ