星野リゾートが見つめる、温泉街再生の未来【後編】
上質なくつろぎ空間や、ホスピタリティ、目でも舌でも楽しめるグルメ、その土地の伝統を感じられるアクティビティ……。多彩な魅力を持ち、多くの人に愛されている「星野リゾート」が、環境問題などにも積極的に取り組んでいることをご存じですか?
ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんならではの視点で、日本を代表するあこがれリゾートのひとつであり、サステナブルなリゾートでもある星野リゾートの魅力に迫ります。今回は、ただ宿泊施設を誕生させるだけでなく、温泉街の再生まで考えた「界 長門」をご紹介します。
未来プロジェクトの実現
「長門湯本温泉観光まちづくり計画」
星野リゾートの提案ではじまった未来プロジェクトは、温泉街全体のリノベーションにつながりました。社会実験、住民説明会、ワークショップ、イベントなどが、さまざまな活動の企画、運営、サポート、情報発信を行う「市民参加型プロジェクト」として公開されたのです。そして、いまもこの試みは継続中です。
2020年3月、前編にあるように、「白木屋グランドホテル」の跡地を活用した「界 長門」が、大きな期待とともに開業しました。同時に観光まちづくり振興は、専門家検討会議や住民のワークショップ、意見交換会などを経て、公民連携の新温泉街誕生へと活動が加速していました。
星野リゾートは、町や地域の活性化を推奨し、それを形成することに長けています。成功例をあげるなら、まずは「星のや竹富島」。島の伝統文化に敬意を払って、その魅力を発信し続けることが大事だと考えています。そして長門湯本温泉の「界 長門」にも「地元民とともに」という共通のキーワードが感じられます。目指は活性する未来です。
長門湯本温泉の各旅館では、世代交代を済ませた若主人たちがプロジェクトに賛同・協力しています。長門湯本温泉の礎であり、何よりも重要な施設である「恩湯」がリニューアルされ、温泉の開祖・湯の神様が祀られています。
長屋を改装した飲食店や焼き鳥屋さん、テーマ性のあるカフェもオープン。さらに、ブリュワリーも誕生しましたから、若い観光客も増えることでしょう。2度目となった今回の訪問では、たしかに、町が闊歩しはじめていることを感じました。
界 長門
山口県長門市深川湯本2229-1
☎0570-073-011(界予約センター)
客室数/40室 施設/大浴場、湯上がり処、食事処、トラベルライブラリー、ショップ、あけぼのカフェ ほか
アクセス/車:中国自動車道 美袮ICより約30分、山口宇部空港より約75分 電車:JR長門湯本駅より徒歩15分
PROFILE
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。仏国アンジェ・カトリック大学留学後、スイスの山岳リゾート地の観光案内所に勤務。期間中に3年間の4ッ星ホテル居住。仏語通訳を経て1994年、ジャーナリズムの世界へ。ホテルの「環境問題、癒やし、もてなし」の3テーマで現場取材を貫く。世界的ブランドホテル「AMAN」のメディアコンサルタント、他ホテルのアドバイザーも。連載・著書多数。
泊まるだけでは、わからない
「星野リゾート」の魅力に迫る
旅行業界においても厳しい状況が続いているコロナ禍でも衰えを知らない星野リゾートの人気の秘密に、ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんが迫るFRaU webの人気連載「せきねきょうこが選ぶ星野リゾート」一冊にまとめた『麗し日本旅、再発見!星野リゾート10の物語』が発売中。
多くの人を魅了する星野リゾートの独自の世界にふれられる、知られざる物語が詰まった一冊だ。圧倒的非日常感に包まれる星野リゾート最上位ブランド「星のや」はもちろん、コロナ禍で注目度が高まる小規模温泉旅館「界」、ファミリー層に人気の「リゾナーレ」、さらには「青森屋」や「奥入瀬渓流ホテル」などの個性的な宿泊施設まで、数ある星野リゾート施設の中から20施設を紹介するほか、星野リゾート代表インタビューなどの情報も満載です。
●情報は、『麗し日本旅、再発見!星野リゾート10の物語』発売時点のものです(2021年4月)。
Text:せきねきょうこ Photo:玉井幹郎 Composition:林愛子