都会でぶどう園を営み続ける
ぶどう狩りといえば長野県や山梨県を思い浮かべるが、都心である東京の世田谷区にも、実はぶどう園がある。毎年8月と9月につみ取り体験をおこなっている木村ぶどう園もそのひとつだ。
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昭和55年の時点では世田谷区にぶどう園はわずか2園しかなかったという。その後、もぎ取り販売をめざすぶどう園が開園したのをきっかけにぶどう栽培を始める農家が増え、昭和60年には世田谷ブドウ研究会が発足した。現在では木村ぶどう園を含む18名の会員が、世田谷区と目黒区でぶどう園を営んでいる。
「うちで育てているぶどうは藤稔(ふじみのり)や紅瑞宝(べにずいほう)、9月になると近年人気の高いシャインマスカットも穫ることができます。ぶどうは流行の変化が激しいので品種は頻繁に変えています」と語るのは木村ぶどう園の園主、木村孝一郎。ぶどう以外にも6月・7月には夏野菜、冬には小葉物、春に向けてはいちごも栽培しており、はちみつも作っている。
農地のなかでもっとも広いぶどう園は、非常時の避難所にもなっているという。5年前にはフードロス対策も兼ねて敷地内にカフェもオープンさせた。大勢で集まることのできない今だが、木村を慕ってカフェや園を訪れる人も多いという。
「テレワークが増えて、近所に目を向けるようになったり、本来の人間らしい暮らしを求めるようになったりといった人が増えたのかもしれない。都心でぶどう園を持続させるのは簡単ではないけれど、今の時期にはもう新しい芽が枝の中で作られ、次の実をつける準備が始まっている。とにかく今は淡々とやり続けるだけだね」
木村ぶどう園
●木村ぶどう園公式サイト
●世田谷ブドウ研究会公式サイト