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気候危機から日本を救え! 箱根の旅館が導入したCO2を出さない「水素コンロ」って!?
気候危機から日本を救え! 箱根の旅館が導入したCO2を出さない「水素コンロ」って!?
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気候危機から日本を救え! 箱根の旅館が導入したCO2を出さない「水素コンロ」って!?

日本の夏は、だんだん暑くなってきている。雨の降り方も尋常ではなくなってきた……。そう感じる人は多いのではないでしょうか。気候危機はまさに待ったなしの状況です。そんななか、「調理の際にCO2を出さない」ことで、気候危機対策に貢献しようという宿泊施設が現れました。神奈川県・箱根町の強羅にある高級旅館「円(まど)かの杜(もり)」です。その画期的な方法とは、どういうものでしょうか。

「外カリッ、中はジューシーに焼ける!」

箱根登山鉄道で強羅駅まで行き、そこからさらにケーブルカーに乗り換え、ようやく辿り着いたのは、全室露天風呂つきというラグジュアリーな旅館「円かの杜」だ。今日ここで、CO2をいっさい排出しない「水素コンロ」のお披露目があるという。さっそく、水車が回り、風情あふれる玄関口から中に入ると、まずは立派な梁が巡らされたロビーに圧倒される。出迎えてくれた女将の松坂美智子さんに、なぜ旅館としては世界で初めて水素コンロを導入することになったのかを聞いてみた。

円かの杜の玄関ロビー。モダンななかに荘厳さがある。それにしても立派な梁だ

「2019年の大雨で、同じ箱根にあった大正末期創業の系列旅館に土砂が入り込むなどの被害を受けました。結局、その旅館は廃業せざるをえなくなり、以来、気候変動に強い関心を持つようになりました。気候危機が叫ばれる昨今、私どもにできることはないのか。考えあぐねていたところ、水素コンロの存在を知りました。実際にそのコンロで調理された鶏肉とエリンギを試食し、とてもおいしかったので、CO2削減のためにやってみよう、導入してみようと決意しました。まだまだ小さな一歩ですが、私たちにできることから取り組んでいきたいと思います」(松坂さん)

そう、水素コンロはCO2を排出しないのが最大の長所だが、これでできた料理の「味」も大きなウリ。一般的なプロパンガスに劣らぬどころか、焼き物は中の水分を保ったまま、表面がパリッと焼け、とても美味なのだという。水素コンロを開発したベンチャー企業、H2&DX社会研究所の福田峰之社長が語る。

「水素ガスの燃焼温度は、プロパンガスの約1.5倍。調理時間も短縮できるうえ、燃焼時に水蒸気を発生させることから、焼き物は外がカリカリ、中はジューシーに仕上がるのです。また、臭いがつけられているプロパンガスと違って、水素は無臭ですから、料理に余計な香りがつかないのもポイントです」

手前で料理人が鶏肉を焼いているのが水素コンロ。その奥にあるのがプロパンガスコンロだ。パッと見では、ほとんど区別がつかない

試食会が始まった。まずは、水素コンロとプロパンガスコンロ、それぞれで焼いた鶏肉の食べ比べ。並べてもまったく見分けがつかない。が、ひと口ずつ食べると、その違いは瞭然。一流旅館の料理人が焼いた、一流素材の鶏肉だからおいしいのは当たり前だが、表面は同じカリカリ、パリッでも、ガスコンロで焼かれた鶏肉に比べ、水素コンロの鶏肉は、とにかく中がふんわり、ジューシー。歯触りもやわらかく、より鶏らしい旨みを感じる。

そして牛肉、ホワイトコーン、ウナギが出てくる。どれもこれも、素材の中心にある水分が抜けていなくて、とても旨い! ここまで来てよかった! とくにウナギは、皮がパリパリなのに、中心部は蒸したかのように柔らか。一般にウナギの焼き方は、関西風の地焼き、つまり腹開きにした身を串に刺して、そのまま炭火で焼いて提供する方法と、関東風に背開きにした身をいったん白焼きにし、さらに蒸して余分な脂を落としてから焼き上げる方法に分かれる。前者はパリッとした皮の香ばしさが、後者はハシでほぐれるほどやわらかく、口当たりがよいのが特徴だ。水素コンロで焼かれたウナギは、最初は地焼きの香ばしさが感じられるものの、すぐに、まるで蒸されたかのような、高級スポンジケーキのようにやわらかく、口中でホロホロとほどける食感を味わえる。つまり、関西風、関東風のいいとこ取りなのだ。

水素コンロで調理されたウナギの蒲焼き。皮の香ばしさと身のふっくら感を存分に楽しめる、関西風と関東風“いいとこ取り”の逸品だ

2030年には水素のコストが3分の1に!

とにかく試食した限りでは、水素コンロのポテンシャルはとても高いと感じた。円かの杜では、2023年末までに、水素コンロを5台導入する考えだという。コンロ5台で、年間4.4トンほどのCO2削減になるというから素晴らしいではないか。

ただ、水素ガスの提供料金は1㎥につき1300円ほどだそうで、プロパンガスの約3倍。これでは円かの杜以外の施設は導入に二の足を踏むかもしれない。この点について、前出の福田社長は言う。

「日本政府は、2030年までに水素の価格を現状の3分の1程度にまで引き下げたいとしています。そうなれば、プロパンガスとコストは変わらなくなる。水素コンロを、さまざまな施設に入れていただける可能性は、非常に大きいと考えています」

大浴場の露天風呂には3槽もの湯船が。雄大な箱根の山と深〜い緑を眺めながら浸かれば、浮き世の悩みも吹っ飛ぶに違いない

ともあれ、水素コンロ導入済みの円かの杜は、前述のように全室に露天風呂が設えられているほか、大浴場の露天風呂にも3槽の湯船を備えるなど、ラグジュアリー感、非日常感は満点。1泊1人4万5000円〜と高級旅館なりのお値段だが、まずは「世界初!水素調理ヒレ肉プラン」から試してみては?

Text : FRaU

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