「不法投棄は殺人級の大罪だ!」マシンガンズ・滝沢&坂井きのこがSDGsイベントで訴えたこと【前編】
『マシンガンズ』滝沢秀一さん率いる「滝沢ごみクラブ」のイベントでは、毎回「何か」に詳しいお笑い芸人をゲストに迎えて、さまざまなトークを展開。今回登場したのは、きのこ大好き芸人こと坂井きのこさんです。ごみ清掃芸人ときのこ芸人が口をそろえて「許せない!」と憤っているのは、ズバリ不法投棄。もちろん犯罪であり、やってはいけない悪事ではあるのですが、私たちが思う以上に大きな問題だというのです。
不法投棄について知ることからはじめよう
第2回目の「滝沢ごみクラブ」によるトークイベントのテーマは、「マシンガンズ滝沢と考える不法投棄問題」。ゲストのきのこ大好き芸人、坂井きのこさんと一緒に、不法投棄がいかに問題なのかを見ていくという内容だ。
滝沢 ごみ清掃員としてだけじゃなく、人として本当に許せないのが不法投棄。坂井くんも、きのこが育つ山を愛する芸人として、山にごみを捨てる人は許せないでしょう?
坂井 もちろんです。もう、ホント許せません! 猛毒きのこのカエンタケを投げつけてやりたいぐらいです! 毒性が強くて危ないので、本当には投げませんけど。
滝沢 不法投棄って、みんなもっと怒るべき凶悪犯罪なんです。ニュースでもしょっちゅう取り上げられているけど、意外とみんな聞き流していると思うんですよ。でもそれって多分、不法投棄問題について知識がないのが原因。そこで今日は、一緒に不法投棄について勉強していきましょう!
滝沢 坂井くんは、不法投棄はどんなところで発生すると思う?
坂井 捨てやすい場所ですよね。人目につかない、山奥とかそういうところ。
滝沢 そうそう、やっちゃいけないとわかってわざと捨てるわけだからね。あともうひとつの条件は、すでにごみが捨てられている場所。ごみはごみを呼ぶという法則があって。あるとき、うちの近所に空き地ができて、そこに誰かが旅行用のトランクを不法投棄したんです。4日後にそこを通りかかったら、ごみの山ができていたという。
坂井 ごみが捨ててあるのを見ると、人はそこを「捨てていい場所」と認識してしまうんでしょうね。
滝沢 かつて日本では、とんでもない大規模不法投棄事件がいくつか起きているんですよ。これらは個人が自宅の粗大ごみを裏山に捨てる、といった規模ではなく、企業が計画的にいろんなものを山中や島などに捨てたり埋めたりしてしまう、というもの。史上最凶の不法投棄といわれた「豊島(てしま)事件」と、日本史上最大の不法投棄「青森・岩手県境不法投棄事件」なんかは、とくにひどいです。
香川県の豊島は、小豆島(しょうどしま)の隣にある、風光明媚な島。ここにゆかりのある人物が、廃棄物処理業者となって帰島し、許可されていない産業廃棄物を山のようにもちこんで、不法投棄を続けました。タイヤだの廃油だのの危険物をガンガン野焼きしたものだから、子どもたちがどんどん喘息にかかっていったという。島全体がススに覆われた状態になって、特産物だったみかんなども採れなくなっていったそうなんです。
坂井 え〜! そんな事件があったんですか。大迷惑じゃないですか!
滝沢 1970年代に不法投棄がはじまって、違法な野焼きが終わったのがなんと1990年。その後も、問題がすべて解決することはなく、これまで不法投棄現場の原状回復処理に800億円くらいかかっているんです(※1)。もちろん、産廃業者にそんな資金があるわけがないから、われわれの税金がつかわれているわけです。
大量生産・消費が不法投棄を招く!
滝沢 「青森・岩手県境不法投棄事件」も産廃処理業者によるもので、両県の県境にある山中に、大量のごみを廃棄したという事件です(※2)。150万トンものいろんなごみを、ショベルカーなどの重機で掘っては埋め、土でかぶせてまた捨てることを繰り返したという……。2004年から青森県などが原状回復のため現地を掘り返したところ、何が入っているかわからない、謎のドラム缶が何百個も出てきて、注射針、食品、クリーニング薬剤、フッ素化合物など、ありとあらゆる不法投棄ごみが地中から発見されました。こちらも処理に700億円以上の事業費がかかっています。額面上の金額はそうなんですが、実質、1000億かかったのではともいわれているんですよ。
坂井 不法投棄の処理に、そんなに税金がつかわれていたとは! たしかに、みんな憤るべきですねえ。
滝沢 そうなんです。重機で地面を掘ってごみを取り出して、トラックなどで処理場に運んで処理するわけですから、ものすごいお金がかかる。それだけでは終わらなくって、不法投棄は大気や地質、水質汚染をももたらすわけです。そうして汚れた空気や水を人間や動植物が取り込むわけですから、不法投棄は殺人以上に凶悪な犯罪だ、ともいえる。だからみんなで、声を大にして「許さんぞ!」というべきなんです! 環境を守ることは、自分自身や大切な人たちを守ることにほかならないんですよ。
滝沢 豊島の事件では地元自治体が、以前から疑惑をもたれていた産廃業者に事業許可を出して、実質的に不法投棄を認めてしまったという事実があります。つまり、政府や自治体など行政がいつも正しいことをしているとは限らない。再発を防ぐためには、ボクたちは「行政を監視する権利をもっている」ことを自覚する必要があるんです。それから、こうした事件は「安くごみを処理したい」という企業のエゴから発生しています。悪質な産廃業者は、他の業者より安く産廃処理を請け負って、あげく、そのごみを適正に処理せず不法投棄したわけですから。
坂井 なるほど、だから当時、産廃処理の適正価格の破壊が起きたというわけですね。
滝沢 不法投棄の根本には、物質的な豊かさが追求された結果、大量生産や大量消費がもてはやされ、捨てるときにも安さが基準になっている、という私たちの意識があります。大量に生産・消費されたものは大量廃棄につながり、価格破壊が起こる。その結果、消費者の生きる指針が「ものの安さ」になってしまう、ということです。
坂井 不法投棄に、そんな根深い社会問題が隠れていたとは……。まさに、いろんな意味でSDGsの敵なんですね。
(※1)豊島事件:1978年、香川県が、「ミミズの養殖をする」という豊島総合観光開発に有害産業廃棄物処分場建設の許可を出したことにはじまった不法投棄、処理事件。以降、豊島の港から日々、20ヘクタール超の土地に大量の産廃が持ち込まれ、連日行われた野焼きによって、島の児童らに喘息などの健康被害が相次いだ。1990年にようやく兵庫県警が同社を摘発。原状回復を求めて島の住民たちは香川県を相手に公害調停を申請、2000年になって当時の県知事が謝罪、住民と合意に至った。2019年までに91万3000トンの産廃物や汚染土が県により撤去されたが、いまだに汚染水の処理は終わっていない。
(※2)青森岩手県境不法投棄事件:1998年頃から青森県の三栄化学工業が、両県境の27ヘクタールの原野(同社代表の私有地)に、長年にわたってダイオキシンなどを含む危険な産廃(廃油入りドラム缶等)約150万トンを不法投棄した事件。産廃は、埼玉などおもに首都圏の計1万2000社から持ち込まれており、都会から田舎に大量のごみ押しつけられる構図が浮き彫りとなった。1999年に青森、岩手両県警が強制捜査に入り事件化。両県は2004年から廃棄物の撤去を開始した。
――後編では、坂井さんによる「きのこのSDGs」をお届けしますーー