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大阪の老舗が開発!クールな「男性用ミシン」に込められたアツい想い
大阪の老舗が開発!クールな「男性用ミシン」に込められたアツい想い
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大阪の老舗が開発!クールな「男性用ミシン」に込められたアツい想い

「料理は女の仕事」という固定観念が覆され、「料理ができる男はカッコいい!」というイメージが定着して久しいですが、いまや「裁縫」に、アツい視線が集まっています。創業75年を超える大阪の老舗ミシンメーカーの三代目・山崎一史さんが手がけ、この11月に発売される商品の名前は「TOKYO OTOKOミシン」。女性がつかうのを前提にしたデザインやスペックが一般的だったミシン業界に、一石を投じる商品を開発した想いとは、どんなものだったのでしょうか。

「ミシンがけ」ができる男はカッコイイ!

総重量11.6㎏の鉄製フルモノコックボディに、一般的な家庭用ミシンの約2倍の硬度を誇る針板。帆布などの厚めの布生地はもちろん、レザーまでも安定して縫える90Wハイパワーモーター。革を傷めることなく手回しでしっかり縫うこともできる、アンティークなデザインの「はずみ車」。レザークラフトやDIY、アウトドア用品など「自分のものは自分でつくりたい」と願う男たちのために、老舗ミシンメーカーが開発したのが、TOKYO OTOKOミシンだ。

「世の中には『ミシンは女性がつかうもの』というイメージがあり、ミシン本体に加えて周辺アイテムも、女性ユーザーを前提にしたデザインやスペックになっているのが一般的です。そんな世の中の常識を覆したい、という思いが根底にあります」

こう語るのは、老舗ミシンメーカー「アックスヤマザキ」の三代目・山崎一史さんだ。

もともと大手メーカーのOEMをメイン事業としていた同社が、自社ブランド製品の製造・販売に主軸を移し始めたのは、山崎さんが三代目代表に就任した2015年以降のこと。一般家庭のミシン離れに歯止めをかけるべく、ミシンから長らく離れていたり、あまりミシンに接してこなかったりした層に「手づくりの楽しさ」を味わってもらえる製品づくりを進めていく。

「アックスヤマザキ」代表取締役・山崎一史さん。2005年入社、2015年に三代目代表に就任した。以降、OEM主体から少しずつ自社製品の製造・販売へとビジネスモデルを転換していく

その結果生まれたのが、ほぼミシン初心者の子育て層向け「子育てにちょうどいいミシン」(2020年)や、眼にやさしく操作が簡単なシニア層向け「孫につくる、わたしにやさしいミシン」(2021年)だ。

「これらの商品を送り出していたのはコロナ禍のステイホーム期間。その間に『マスクを手縫いしたい』『自分のものは自分でつくりたい』という男性からの問い合わせも増えてきました。そこで男性用ミシンの開発を考えたのですが、実際に需要があるかリサーチしてみると、実は最初はあまり芳しくなかった。『ピンとこない』という声が大半でした」(山崎さん、以下同)。

「ミシン」と「料理」の意外な共通点

なぜ「ピンとこない」という男性が多かったのか。そのヒントとなるのが「ミシンでの手づくりは料理に似ている」という山崎さんの言葉だ。

「ミシンと料理の共通点はいくつかあります。まずひとつ目は、プロの世界では男性もバンバン活躍しているのに、家庭では女性の仕事になっていることです」

たしかに家庭ではいまだに「料理は母親の仕事」という傾向があるが、プロの板前、シェフは男性の方が圧倒的に多い。ミシンの世界も同様で、たとえばスーツを仕立てるテーラーなどは男性が非常に多い一方、家庭でミシンをつかって縫い物をする男性はごく少数だ。

「男性でも女性でも、やりはじめたらどんどん熱中していく人が多い点は同じ。最初の一歩を踏み出すのに、躊躇(ちゅうちょ)しがちなのも同じです。料理もミシンも未経験者にとっては、どうやって準備してどんな手順で作業するかがイメージしづらいため、心理的なハードルが高いのでしょう」

この心理的ハードルが、リサーチ時の「ピンとこない」という反応につながったのだろう。では、どうすればそれを変えられるのか。解決策も、料理とミシンの共通点にあった。

「料理は、凝りはじめると『北海道産の高級エビが手に入った!』『激レアな大間のマグロを買いに行こう!』など、素材選びだけでも『どう料理しようか』と楽しくなってくるんですよね。ミシンも同じで、たとえばコードバン(馬の尻革)などの高級レザーやデニム生地、帆布など、素材を見ただけで『どう縫って、何をつくろうか』とテンションが上がってくるんはずなんです」

11月に新発売の「TOKYO OTOKOミシン」。レトロモダン&無骨なイメージのデザインで、インテリアアイテムとしても楽しめそうだ

実は山崎さん自身、日常的にミシンをつかう習慣はなかったという。しかし、今回の開発に向けて素材を選ぶなかで、自然とテンションがアガり、その喜びや楽しさに気づいたそうだ。

「料理したものを自分で食べたり、誰かに食べさせて喜んでもらったりすると、うれしくてまたつくりたくなる。ミシンでのモノづくりも同じで、革製名刺入れやコイン入れ、ゴルフのヘッドカバーなどを苦労してつくり、人から褒められたりすると、かなりうれしいものです。ピンとこないという反応を変えるための決め手はここにある。そう考えました」

実際に、スマートフォンケースやレザーウォレット、ロールツールケースなどをミシンで縫製し、「こんなものがつくれる」と提示すると、「カッコイイ! こういうものがつくれるならやってみたい」という人が一気に増えたという。

厚手の帆布やレザーも手回しで縫える「はずみ車」を搭載。縫う距離が短い場合は、電動よりはずみ車を使ったほうがしっかり縫製できる

「モノづくりの楽しさ」に性別は関係ない

「当社がいつも考えるのは、『ミシンは他人ごと』な人たちに、どうやれば『自分ごと』と感じてもらえるかということ。今回考えたのは、男性がつくりたくなるアイテムをミシンで縫うために、どんな機能が必要かということです」

その結果、レザークラフトや帆布を使ったアウトドアグッズ、デニムの縫製など、とにかく「分厚い素材をストレスなく縫える」という、パワーと安定感がキーワードになった。それを実現するため、TOKYO OTOKOミシンは企画立ち上げから開発に2年を要し、ハイパワーで頑丈なミシンが完成したのだ。

一般的な家庭用の2倍の硬度を誇る針板。この針板のおかげて、デニム生地や帆布、レザーなどの分厚い素材でも凹むことなく、太めの針を容易に貫通できる

「自分でつくったモノなら、多少縫い目がズレたりしても、それも味になり愛着がわく、という声も多かった。そこで、複雑な機能は追い求めずに、とにかく直線縫いの安定感に特化し、ハードな素材の縫製にも耐えられる硬度と強度を実現しました」

さらに、はじめての男性でも手を出しやすくするため、「初心者キット」も販売した。革製の「名刺入れ」「眼鏡ケース」「コインケース」の3種類がラインナップされているが、今後は別素材も含め、バリエーションを増やしていく予定だそうだ。そしてもちろん、初心者向けの操作ガイドなどの動画もWEB上で展開している。

TOKYO OTOKOミシンで男性がつくったメガネース、コイン入れ、カード入れ。オリジナルのタグもつけられる

最後に山崎さんは、こう強調する。

「OTOKOミシンという名をつけ、男性向けの機能やデザインを強調していますが、あくまでも目指すところは、男女関係なくミシンでのものづくりが楽しめる世の中です。現状が女性向けのミシンばかりなので、あえて男性向けを強調したまでのこと。料理=女性という考えがすでに古くなっているように、ミシンに関しても男女の区別がなくなる方向に世の中を変える商品をつくりたかったんです」

text:奥津圭介

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