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心揺さぶられる「アウトサイダー・アート」に会いに
心揺さぶられる「アウトサイダー・アート」に会いに
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心揺さぶられる「アウトサイダー・アート」に会いに

いわゆる「美術」の外にいて、創作しつづける人がいます。ときに断絶された世界で、誰かの、何かのためでない、沸き立つ表現──。魂があふれ出たかのような心揺さぶる作品と、つくり手たちを訪ねました。今回のスポットは「クシノテラス」です。

美術教育を経ない人ならではの芸術

「アウトサイダー・アート」とは、既存のアートに対し「アウトサイド」とされる、美術教育を受けていない人による、独自の芸術活動のこと。障がいや生きづらさを抱える人の作品でも知られるが、身近な日常で、刑務所で、あるいはどこかで人知れず、さまざまな表現が生まれている。独創的で自由で、これこそ創作の真髄と感じられるような、魂を燃やす作品と出合ってほしい。

小林一緒

自分で食べた弁当やラーメンが、日付や値段、味の感想とともに、記憶を頼りに設計図のように緻密に描き残される。具材は無論、皿の模様やハシ袋にいたるまで几帳面に、なかには実際のパッケージが貼られていたり、立体的に表現されたものも。食べるのが好きで、調理師として蕎麦屋や病院に勤めたという。

毎日の食事を日記代わりに記すようになったのは18~19歳のこと。46歳でアルコール性の神経障害を患って足を不自由にしたが、59歳になった現在も変わらず埼玉県三郷市の自宅で、買ってきてもらったコンビニ弁当と向き合っている。

絵かられあふれる食への愛は、いまも変わらなく思える。ささやかな日々を描くことが、いつしか生きることと重なり出す。

長恵

十字架をまとい、黄色のハンドベルを両手にして舞う、ふくよかな天使たち。その姿はわれわれを祝福しているかのようでもある。広島県内の福祉施設で長年、障がいのある人たちの表現活動を支援し、2007年に病で勇退。それを機に自らも絵筆をとり、ドラえもんをヒントにした空想上のキャラクター「天子」を、空き箱や段ボールなど身近な素材に描いた。

人々の幸せを祈るような画面からは、クリスチャンとしての深い信仰心と、やさしく朗らかでユーモラスな人となりが感じられる。退職後、パーキンソン病の進行に加えて癌を患い、2020年10月に享年78で永眠。だが、美しい祈りの絵画たちは、永遠の命を伝えるように鮮やかに躍動している。

クシノテラス

アウトサイダー・キュレーターの櫛野展正により、2016年4月に設立。社会の周縁で表現を行う人たちに焦点を当てて全国各地を取材し、展覧会や執筆活動などを通して、彼らの作品や生きざまを紹介している。その内容は、障がいの有無にかかわらず、死刑囚による絵画から、高齢者による表現物まで実に幅広い。展覧会は不定期で開催。
kushiterra.com

●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Text & Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子

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