多様な美しさに満ちたサステナブルビューティの時代へ【前編】
これからの時代、環境や社会に配慮したスキンケアやメイクアップを心がけ、心身ともに健やかであることがより美しい自分を目指す基本となります。そのうえで美の基準はジェンダーレスでボーダーレス。さまざまな価値観が存在し、認めあうことで、世界は多様な美しさで満たされていきます。
エシカルなライフスタイルを実践するメイクアップアーティストのMICHIRUさんとホリスティックに造詣の深いビューティエディター安倍佐和子が、サステナブルビューティの可能性を探りました。SDGsコンシャスなブランドの紹介も!
いよいよ持続可能な美しさ、
その価値を定義する時代へ
メイクアップアーティストMICHIRU
× ビューティエディター安倍佐和子【対談】
安倍 日頃からサステナブルビューティを意識されているMICHIRUさん。根幹にあるものは?
MICHIRU 美しさの本質を考えていくと、心も身体も健康であることが大事。この考えが自分のベースにあるので、何を選んで食べるかにはこだわっています。身体に負荷をかけたくないので、自然とオーガニックを選ぶようになりましたね。
安倍 健康は美しさの第一条件。同感です。
MICHIRU 食がきっかけですが、オーガニックからサステナブルへの関心も高まって、私のベーシックになりつつあります。
安倍 オーガニックに目覚めたきっかけは?
MICHIRU 家族に癌が見つかった15年前です。
安倍 私もその頃にホリスティックに傾倒、代替療法を学びました。
MICHIRU 同じタイミングですね。自分の食卓にのぼる食材がどうつくられているのかを知り、積極的に肉を摂取するのをやめました。
安倍 ヨガやアーユルヴェーダ、パワースポットに代替療法など第一次エシカル世代ともいえます。
MICHIRU その頃から地球温暖化が叫ばれ、警鐘が鳴らされていましたが、ようやく真剣に取り上げられるようになったと実感しています。
安倍 MICHIRUさんが選ぶのはサステナブルな取り組みをしているブランドから?
MICHIRU 仕事ではいろいろ使いますが、自分の肌に使うものはそうしたいと思っています。
安倍 最近は多くの化粧品ブランドがサステナブルな取り組みを実践。ラグジュアリーブランドも積極的で、以前より選択肢がぐっと増えました。
MICHIRU 製品開発に関わるようになってからは、原材料や生産過程の環境も気になるように。
安倍 オーガニックであること以上に、植物由来成分がどんな土壌で育まれたものかが注目されています。最近は生産過程が可視化されるようになって透明性も増してきたよう。そして、関心が高まっているのがボトルやパッケージの問題。
MICHIRU リサイクルも浸透しつつありますが、やはりプラスチックなど、土に還らないものはつくるべきではないと思うのですが。
安倍 私が気になっているのは、容器はもちろんですが中身の廃棄問題。口紅やネイルとか、みなさんどうされているんでしょうか?
MICHIRU 私はネイルの中身をペットシーツに吸わせて捨てていますが毎回、苦労しています。
安倍 この問題は大きな課題ですが、朗報も。最近、カラーコスメメイクの中身を回収してクレヨンに再利用するプロジェクト「COSME no IPPO」が誕生しましたね。
MICHIRU 私も真っ先に寄付しました! ビューティに関わる者として、再利用してもらえるのはほんとうにうれしいことです。
安倍 ラグジュアリーブランドでもリフィル販売やリサイクルガラスの再利用などが増えてきましたし、プチプラの小さなサイズも使い切れるという点ではエコ、評価しています。日本でもヨーロッパのようなサーキュラーエコノミー(循環型経済)という考えが浸透していくといいですね。
MICHIRU モノが生まれる段階から廃棄まで考えてつくるという考え、賛成です。服や車などではシェアも普及しはじめていますが、化粧品は難しいから、メーカー側から廃棄の方法をアナウンスするなど、どう循環させていくべきかの知恵をシェアしてくれるとありがたいですね。
安倍 消費優先ではなくなりつつあるビューティ市場のサステナブルな未来のためには、独自のサーキュラーエコノミーも必要なのかもしれません。その可能性を私たちひとりひとりが、当事者として追求していきたいですね。
MICHIRU ほんとう! そう願います。
MiMCの
サステナブルな取り組み
オーガニックやナチュラル原料はトレーサビリティまで管理。環境汚染物質の排出削減まで配慮したものを採用し、パッケージもリサイクルしたものを優先。米発酵エタノールは廃棄物フリー処方。農福連携プロジェクトへの参画や製品の売上の一部を途上国の支援にも寄付。
YSLボーテの
サステナブルな取り組み
モード系ブランドのなかでも積極的なYSLボーテ。モロッコの自社農園では環境に配慮した原料調達、地域活性と援助を行いながら、クリーンな製品開発を実施。工場や輸送でのCO₂削減、レフィラブルやリサイクル原料を店舗やパッケージに採用し、真摯な取り組みを続けている。
スナイデル ビューティの
サステナブルな取り組み
メイクアップ製品もシリコンや動物由来成分、紫外線吸収剤等の7つのフリー処方に。また、店舗の内装や接客ツールにはエシカルレザーやリサイクルガラスを採用。有料バッグはFSC認証紙を採用するなどJビューティの新基準となるような持続可能な取り組みを続けている。
●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
Photo:Makoto Nakagawa(models/CUBISM) Illustration:Yachiyo Katsuyama Make-Up:MICHIRU(3rd) Hair:TOMO(perle) Stylist:Yoshiyuki Mayama(m0 management) Model:Sena Nakajima(étrenne) , Masaki Seko(VELBED.) Text&Edit:Sawako Abe