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「地球の反対側」まで意識し、共感できるようになる写真展
「地球の反対側」まで意識し、共感できるようになる写真展
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「地球の反対側」まで意識し、共感できるようになる写真展

自然破壊や環境問題など、世界各地で起きている出来事を独自の視点で捉える作家たち。ニュース映像や報道写真とは一線を画する、アーティストたちのメッセージをフィーチャーします。

Barbara Dombrowskiの作品から見る
現代の問題と地球の未来

グリーンランドの氷山は地球温暖化の影響を受け、21世紀に入り、さらに融解が加速した。現在も未曾有のペースで進んでいる

写真家でアーティストのバーバラ・ドムブロスキーがユーラシア、アフリカ、南アメリカ、北アメリカ、オーストラリアの5大陸で暮らす人たちにフォーカスしたプロジェクト「トロッピック・アイス」をスタートしたのは2000年のこと。

「その年、息子が生まれて、この子が大きくなったときにはどんな世界になっているんだろうと考えたのがきっかけでした。まずはじめはグリーンランドとエクアドルの先住民を訪ね、両国で互いの生活風習と自然にまつわる写真をそれぞれ展示するという試みでした。実は、はじめた頃はテーマがあまりにも抽象的すぎると、周囲に興味を持ってもらえなかったんです」

グリーンランド・タシーラクそばの沈没船残骸に、「ソリ用の子犬を運ぶ青年」のポートレイトを展示

それでもあきらめずに活動範囲を広げ、タンザニアのキリマンジャロ、キリバスの島々、モンゴルのゴビ砂漠へと出かけた。

「地球上のまったく違ったエリアで撮影、展示を続けていくなかで、その土地土地の精霊信仰や自然崇拝をするアニミストたちと出会いました。そこで私はこれまでキリスト教主義的思想、近代産業化などの影響で、何百年も続いてきた自然との共存という営みが脅かされてきたことを感じました。地中から石油、石炭を掘り起こし、森林を伐採し、海を汚染し、地球から資源を搾取することで環境を破壊し続け、いまではこれまでにない規模の自然災害が発生している。私たちが欲望に任せて経済性や利便性を追求した結果ともいえます。ただちに過ちをあらためて、人は自然への回帰を目指し、再びともにつながっていく必要があると思っています」

アマゾンの奥深くで大自然と共存し、伝統的な暮らしを続ける先住民アチュアル族。彼らの聖なる木「セイボ」に掛けられたのは「氷河を渡るイヌイット」の写真

たとえばアマゾンの森のなかに「イヌイットと氷河」の写真を展示する。すると地球の反対側で起きていることを意識するようになり、共感が生まれ、やがて立ち上がるモチベーションになっていく。自分のアートからは、そんな効果を期待しているという。

「ちなみに現在21歳になった息子は、自分の意志で『フライデーズ・フォー・フューチャー』のデモに参加しています。私は、2021年に山火事のあったシチリア島、水害で多数の死者の出たドイツのアールの谷など、欧州の自然災害の現場にも足を運びました。できる人ができることを、興味あることをアクションできるようになればと願っています」

PROFILE

バーバラ・ドムブロスキー
ドルトムンドとパリでビジュアル・コミュニケーション専攻後、1996年よりハンブルクを拠点に活動。www.barbaradombrowski.com

●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
Coordination:Yumiko Urae Text:Yuriko Kobayashi , Chizuru Atsuta Edit:Chizuru Atsuta

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