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世界遺産・奄美大島の最南端で最高のワーケーションを!(前編)
世界遺産・奄美大島の最南端で最高のワーケーションを!(前編)
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世界遺産・奄美大島の最南端で最高のワーケーションを!(前編)

コロナ禍のなかで、よく耳にするようになった「ワーケーション」。けれども、バケーションが楽しめるリゾートには、Wi-Fiなど仕事環境が整っていないケースも多くあります。さらに、「長期滞在したいけれど、地元の方々とのコミュニケーションが心配」という人も少なくないでしょう。そうした問題を解消すべく誕生したのが、鹿児島県奄美大島のコワーキング施設。島の魅力とあわせて、その全貌を紹介します(前編)。

ワーク&バケーション=「ワーケーション」が満喫できる絶好の施設

2021年7月、世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。鹿児島本土と沖縄本島のほぼ中間にあり、その多くが木々に覆われた緑豊かな島だ。島唄や大島紬、島グルメ「鶏飯」など、固有の文化も大きな魅力。その最南端にある瀬戸内町に、ワーケーションの起点となるコワーキングスペースが登場した。

「すこやか福祉センター“HUB”」は、瀬戸内町役場の敷地内にある24時間年中無休の施設。高速インターネットや卓上スピーカーフォンを備え、窓の外には港町が広がる。

オフィススペースの奥には、瀬戸内町と港が見渡せるウッドテラスがある。晴れた日には、山際に沈むサンセットを望みながら仕事ができる。
大型モニターやプライベートブースを完備し、さまざまなワークスタイルに対応。町の中心部に近く、島グルメなどが堪能できる飲食店にも行きやすい。

HUBという施設名には、地元の人と島の外から来た人をつなぐ「ハブ」でありたい、という思いが込められている。もともとは島外からきた人のためにつくった施設だったが、場所柄、役場の職員たちもフラリ立ち寄って仕事をしていく。かと思えば、近隣の会社が会議の場として利用していたりする。ごく自然に、島内外の人々の交流が生まれる場所になっているのだ。

飲食店やスナックは多いものの、喫茶店やカフェなど、ゆっくりと仕事や作業ができるスペースがなかった瀬戸内町。HUBができたことで、町の人たちのワークスタイルも少し変わったようだ。

施設を利用する場合は、日、月、年単位からプランを選んで会費を支払えばOK。専用のカードキーを使って、24時間いつでも出入りできる。Wi-Fi完備でインクジェットプリンターも利用でき、コーヒー、紅茶はFREE。広々としたスペースで、ストレスなく仕事に集中できる。

室内の大テーブルでは、町にある人気リゾートホテルの社内会議が行われていた。これまではホテル内で行っていたそうだが、ホテルゲストの目に触れにくいHUBに場を移したことで、より集中して議論できるようになったという。

筆者も窓際の一人席に座って原稿執筆に励んでみた。瀬戸内町の人たちに混じって仕事をするのは、なんだか新鮮な感じ。平日の9時から17時まではカウンターにスタッフがいるので、町や島のこと、オススメの夕食処など、いろいろと教えてくれて心強い。

仕事がひと段落したら、目の前にある海を見に行ったり、HUBの運営会社が主催するアクティビティに参加したりもできる。とくにスキューバダイビングやシュノーケリングなどマリンスポーツが好きな人には、たまらない環境だ。

瀬戸内町役場に勤める、福岡県出身の手嶋さん。瀬戸内町出身の女性と結婚した縁で、移住して子育てをしている。「町のみんなで子どもを育ててくれる感じ。とても居心地が良いです」。

瀬戸内町は奄美大島の南端にあり、大島海峡を挟んで加計呂麻島、請島、与路島の有人島3島を擁している。美しい珊瑚礁が広がる国内有数のダイビングスポットとして知られ、多くの自然好きが訪れる町だ。観光地としてすっかり整備が進んでしまった沖縄を超える「秘境」として、国内外のファンから注目を集めている。

「瀬戸内町は、もともとは人口3万人ほどでしたが、ここ40年で8000人にまで減少してしまいました。この町で生まれた子どもの多くは、中学まではこの地で過ごし、高校からは鹿児島本土に出ていってしまう。さらに大阪や兵庫県の大学に進学し、そのまま島には戻ってこないケースもたくさんあるのです」(瀬戸内町企画課・企画振興係の手嶋祥大さん)

町では、企業誘致や移住サポートに力を入れている。実際、豊かな環境と穏やかな気候に惹かれて、「移住を検討したい」という問い合わせが、月に10件ほどは入るとか。

「けれども、住む場所がなかなか見つからないという問題があって、そこから進まないケースが少なくありません。また、短期で訪れるのと住むのとでは、やはり違うようです。そこで瀬戸内町は、移住を検討している人たちに対して仕事や家が見つかるようサポートしつつ、半年ほどの体験移住をしてもらい、ありのままの瀬戸内町を見ていただいています。その第一歩として、このHUBを活用していただければ」(手嶋さん)

HUBが用意するアクティビティのひとつが大島海峡クルージング。日本の市町村で唯一、内部に海峡を有する瀬戸内町ならではの体験ができる。1〜2月は、運がよければクジラに会えることも。

夜な夜な人々が集って「島唄」を歌う

瀬戸内町の魅力は、美しい海や豊かな山などの自然だけではない。住む人々がみな、おおらかで温かいのだ。

「私たちはここで生まれ育っているので、景色がキレイといわれても『そんなもんかな』と思うんですが、『人がいい』といわれると『そのとおり』と思うんです。ゆったりしていて、みんなやさしい」と語るのは、前出・手嶋さんの上司、瀬戸内町企画課の登島敏文課長だ。

「役場がある中心部の古仁屋は、飲食店や商店、病院などが半径1㎞以内におさまっているコンパクトシティ。すべてがここで完結するので、とても暮らしやすいんですよ」(登島さん)

人口ひとりあたりの居酒屋やスナックの数が多く、夜になると町民のほぼ全員が古仁屋中心街に集まってくるという。たしかに、どの居酒屋、寿司店、小料理屋などを覗いても、ほぼ満席。クロマグロ、キハダマグロや鯛の刺身、もずく天ぷらほか島料理を肴に、これらの店で飲んだ後、さらにスナック2軒、3軒とハシゴして、最後は客と店員みんなで歌うのが毎晩のお約束のようだ。

奄美群島国立公園内にある瀬戸内町・ホノホシ海岸のサンライズ。浜の中央にある岩には、干潮時にだけ現れる祠がある。
 

「世界遺産に登録されて、『さあ、たくさんの人に町のいいところを知ってもらおう!』と思った矢先にコロナ禍になってしまったんです」と手嶋さん。

「けれども、だからこそ多くの人を迎え入れる準備ができたのだと、前向きに捉えています。HUBができたことで、町でのんびりしながらもしっかり仕事ができる環境が整いました。ひとりでも多くの方に瀬戸内町にお越しいただき、町の魅力に触れ、町とつながってもらえたら最高ですね」(手嶋さん)

――後半では、HUBのアクティビティについてレポートしますーー

photo:横江淳 text:萩原はるな

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