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未来の「商品パッケージ」は、ここまで進化する!
未来の「商品パッケージ」は、ここまで進化する!
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未来の「商品パッケージ」は、ここまで進化する!

大量生産・大量消費を支えてきた「単なる包装材」としての役割から、送り手と受け手を真の意味で「つなげる」存在へ。商品パッケージの製造業界でも、SDGs第7の目標「エネルギーをみんなに/そしてクリーンに」や第12の目標「つくる責任・つかう責任」などに関連する″未来を見据えた取り組み”が進んでいます。

4人のデザイナーがつくった「少し未来のパッケージ」

東京・丸の内で開催中のイベント「Packaging-Inclusion vol.1『つながる』」(2022年5月開催)は、第一線で活躍する4人のデザイナーとともに「少し未来のパッケージ」を考える展示会だ。主催したのは、パッケージングソリューションカンパニー「フジシールインターナショナル」と、製品やパッケージを加飾する薄膜フィルムおよび周辺機器の大手メーカー「クルツジャパン」の2社。

4人のデザイナーはそれぞれ「つながる」というテーマで、パッケージの「少し未来」を見据えた作品を制作。どれもが非常にユニークな「新時代における持続可能性を意識したパッケージの模索」となっていた。

なかでももっともSDGsを意識していたのが、佐々木智也氏の作品「Bottling Pouch」。洗剤やシャンプーの「詰め替え用パック」などによく使われている「ソフトパウチ」をオシャレなボトル型につくり替え、そのまま家庭の食卓や化粧品棚、バスルームに置いても違和感がないようにデザインし、耐久性も高めたものだ。

佐々木氏は、パウチの「優れた輸送コストや環境負荷の軽さに着目」したのだという。今回の作品には、生産者の情報を追えるトレーサビリティ機能もついている。パウチの二次元バーコードをスマホなどで読みこむと、生産者がどこの誰なのかが瞬時にわかるのだ。さらに、個人経営ECショップなど、個人間の取引にもつかえる配慮がされている。

つめかえ用の洗剤やシャンプーなどにつかわれているソフトパウチをベースに、耐久性やデザイン性などをブラッシュアップした「パウチボトル」。

「たとえば『ちょっとしたものをネットで売りたい』と考えている個人の生産者が、安い輸送コストで消費者と直接つながることができるよう、軽量にしました。ビンやペットボトル、プラスチック容器と比べて資源の節約にもなる。目につくところにそのまま置けるような、デザイン性の高さも意識しました」(佐々木氏)。

詰め替えたら、お役御免。廃棄されるのが当たり前だったパウチの可能性、新たな未来が、見事に表現されていた。

「箔転写」の技術が缶詰をサステナブルなものに

続いては、小玉文氏の作品「link-can」。災害時の非常食として、ただストックされがちな「サバの味噌煮」「シチュー」などの缶詰を、「好きになって集めたくなる」「インテリアとして部屋に飾りたくなる」ようなパッケージにこだわって小玉氏がデザインした。専用のケースにこれらを積み重ねれば、小さなスツールやテーブルに変身する。

缶に直接印刷されているように見えるが、模様を印刷した薄いシールが貼ってある。

カラフルでかわいい模様は、一見、缶に直接印刷されているように見えるが、模様が印刷された薄いシールを貼っているところがポイントだ。缶の地のように見えるシルバーの部分は、転写箔で表現されている。缶に直に印刷すると、その缶はリサイクルできず、廃棄になってしまうことが多い。だがシールなら、それを剥がすだけで簡単にリサイクル可能になる。缶だけでなく、ビンやプラスチック製ボトルなどさまざまな容器に展開でき、ゴミを減らすことができる手法だ。

「ふだんのパッケージデザインの仕事でも、使用する紙に『森林認証紙』をつかわせてほしいとクライアントに要望するなど、常に環境負荷は意識しています。今回の『link-can』で使用した弱粘着性シールは、非常食を食べた後に缶から剥がして、ステッカーとしても楽しめればいいな、と考えました。災害時にも被災者の心を和ませ、楽しい気分になれるデザインにできないかとも意識したつもりです」(小玉氏)

「エコ」や「効率」「環境への配慮」と、「デザイン性の高さ」「かわいらしさ」を両立させようという、デザイナーの強いこだわりが感じられる作品だった。

「つくる責任/つかう責任」そして「多様性」の表現

また、真野元成氏による「CROSS CHOCOLATE」は、特定の人へのプレゼントを、オンライン発注によるオーダーメイドのパッケージで、「そのときの感情がグラフィックデザインに反映される」というもの。「デジタルとフィジカルをつなげる」というコンセプトに沿った、近未来のパッケージといえるだろう。

軽量コンパクトで輸送しやすいパッケージ。金色の細い線は、声紋をモチーフにしている。

「現在は環境への負荷から“ワルモノ”にされがちなプラスチックですが、実際はさまざまなモノを石油からつくった“余りモノ”から生成されています。利便性が高く低コストと、世の中に大きく貢献してもいるのです。海洋ゴミ問題にしてもプラスチックだけが悪いのではなく、つかう人間の責任のほうが大きい。今回のパッケージは、プラスチックの新しい可能性を模索したい、という思いもありました」(真野元成さん)。

まさにSDGsの第12の目標「つくる責任/つかう責任」を意識した作品となっているのだ。

最後は石田清志氏による“行為と時間軸がつながる12面体カレンダー”「CAL.AND」だ。

素材は紙。正12面体のオブジェの各面に、折り込む形でカレンダーを収納。内部には、各月に見られる黄道12星座が箔押しでデザインされている。

いくつもの「CAL.AND」をシュリンク(フィルムに熱を加えて、ぴったりと包装を収縮させること)しており、前衛的なオブジェのようにも見える。

「展示会のタイトル『Packaging-Inclusion』の『Inclusion』は、包括、包含するという意味があります。多様性を包含した『日常』を12面体の立体構造物で包み、そこに星座のモチーフを組みこむことで、日常の中で天体や地球を意識させるようなデザインにしました」(石田氏)。

以上、4人のデザイナーは、パッケージデザインやブランディングの世界でさまざまな賞を獲得してきた一流の方ばかり。彼らが先導する「SDGsに配慮したパッケージ業界の新常識」が生まれた瞬間に立ち会ったような気がした。

photo: Daisuke Ohki text:奥津圭介

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