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マグロのおいしさを本気で伝え、未来につなげる。東洋冷蔵が希少な“天上鮪”を売り出した理由
マグロのおいしさを本気で伝え、未来につなげる。東洋冷蔵が希少な“天上鮪”を売り出した理由
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マグロのおいしさを本気で伝え、未来につなげる。東洋冷蔵が希少な“天上鮪”を売り出した理由

未来に向けた独自の取り組みやユニークな視点を紹介するFEATURE。今回取り上げるのは圧倒的なマグロの実績を中心とした水産資源の持続的利用をおこない、世界規模で事業を推進している東洋冷蔵株式会社。2021年10月、世界中で獲れるさまざまなマグロの味を消費者に伝える為に「天上鮪」ブランドを立ち上げ、限られた機会でしか食べる事が出来なかった極撰マグロの定期便をスタートさせたことで大きな注目を集めている。そこには「家庭でもっとマグロを食べてもらいたい」という想いと、水産資源と漁業の持続可能な未来に向けた決意が込められていた。

撮影/前田一樹 取材・文/水谷美紀

本当の「厳選マグロ」を家庭に届けたい

静岡県・清水港。東洋冷蔵株式会社(以下、東洋冷蔵)が買い付ける遠洋延縄船が出入港する場所だ。約1年かけて世界各地の漁場からマグロを集め、清水に戻ってくる。「黒いダイヤ」とも呼ばれる本マグロをはじめ、水揚げされたさまざまな種類のマグロ約12万tはここで選別され、全国に送られていく。1日に1,000本以上のマグロを目利きする職人たちの動きには無駄がなく、大量の魚は数秒単位で仕分けされ、冷凍状態を保ったまま同社の超低温倉庫(-50℃以下)に運ばれていく。そこからさらに出荷前には専門の目利き人による尾切選別(マグロの尾の断面を見る事で、より品質の良いマグロを見極めていく)がおこなわれ、品質に応じて各顧客に出荷されていく。

1971年の創業以来、一貫して「自然の恵みである水産資源の価値を高めること」と「商品をいかにおいしくお客様の食卓にお届けすることができるか」を追求し、日本の水産加工業を支えてきた東洋冷蔵が2021年10月、最高品質のマグロだけを集めた「天上鮪」の販売を開始した。これまで高級寿司店など一部の飲食店でしか食べられなかった極上の味を家庭でも楽しめるという、ありそうでなかった取り組みだ。

「近年は回転寿司ブームなどもあって、マグロ自体を食べる人は増えています。ところが、一般の方々が『本当においしいマグロってどこで買えるんだろう?』と考えたとき、意外と身近に買える場所がなかったのです。そこで、いわばマグロのプロである東洋冷蔵が選んだ最高品質のマグロをご家庭で食べていただくために、天上鮪の販売をスタートしました」と語るのは、鮪鰹担当役員付の岸田佑典さん。

天上鮪は「家で食べるマグロ」の概念を覆す

「これまで東洋冷蔵はBtoBに徹した、いわば黒子的な存在の会社でしたが、さまざまな種類があるマグロの魅力を自分たちからも発信しようと考え、2019年からEC市場にも参入しています。天上鮪は「おいしいマグロを家で食べてみたい」という方に向けた商品で、毎日1,000本以上のマグロを見ている当社の目利きが厳選した最高品質のマグロを月に1回お届けする仕組みです」

創業から約50年もの間、ずっと地道に日本の水産加工業を支えてきた東洋冷蔵に表舞台への進出を決断させた背景には、「おいしいマグロをひとりでも多くの人に届けたい」という願いとともに、次世代にもそのおいしさを残したいという想いがあった。

「地球にやさしくおいしい」が次世代に本物のおいしさを残す

天上鮪は日本船籍の延縄(はえなわ)漁船で獲られたマグロに限定している。一度に大量に獲ることができて効率的な反面、漁獲量をコントロールできない巻網漁と比較し、延縄漁は乱獲や過剰漁獲を防ぐことができるため、よりサステナブルな漁法といわれており、限りある資源であるマグロの生態バランスを守る事に繋がる。約3,000本もの釣り針がついた全長100〜150kmの縄を投縄から引き上げまで丸一日かけておこない、30匹捕獲されたら大漁という漁法でもある。

また天上鮪のブランド化には、マグロ漁業に携わる生産者を含めた持続可能性に対する危機感もあったと岸田さんは語る。

「マグロ漁船の数は年々減少しています。以前は日本だけで700〜800隻ありましたが、今は全世界でそれくらいの隻数にまで落ち込んでおり、日本の船は150隻しかありません。漁師はおいしいマグロを届けようと、過酷な漁場に1年かけて出かけますが、今後おいしいマグロを求める人が少なくなれば、その数もさらに減っていきます。現に、特定の漁場に通じていた船頭さんが廃業してしまったために、もうそこのマグロは食べられなくなった、というケースも出てきています。わたしたちは生産者や目利きの職人たちの技術や伝統を次世代に引き継ぐためにも、本当においしいマグロをひとりでも多くの方々に届けなくてはいけません」

残っているマグロ漁船も、時代とともにさまざまな課題が山積していると話すのは、現場を誰よりも知る、営業第一部副部長の須原武さん。東洋冷蔵が誇る目利きのプロのひとりである。「漁に携わる人間の高齢化も課題ですが、150隻に減った船も時とともに古くなっていきます。そのため近年では、修理したり買い換えたりするより廃業してしまう方も増えているんです。日本の船は非常に質が高く、長く乗っていても安心して操業できる強みはありますが、それでも新しい船に乗って、新鮮な気持ちでこれからも漁に出てほしいという想いがあります。廃業される生産者を減らし、新しくこの仕事に就きたいという人を増やすためにも、もっと多くの人にマグロを食べていただけるように、わたしたちのできることで努力を続けていきたいです」

さらに東洋冷蔵は水産加工業をより持続可能な事業とするべく、他にもさまざまな取り組みを行っている。「海のエコラベル」と呼ばれるMSC認証品をはじめとする世界水産物持続可能性イニシアチブ(Global Sustainable Seafood Initiative)に認定された認証品の取り扱いを増やすほか、マグロ加工で発生する残渣(ざんさ)の有効活用の取り組みや、近隣の小学生を招いた工場見学などもその一環だ。

生態系を守りながら調達され、目利きに厳選された最高品質のマグロの“本物のおいしさ”を伝えることが、彼ら次世代においしいマグロを残すことに繋がっている。

環境レポート2021

マグロも産地や品種、ランクを楽しむ時代へ

マグロは人気の高い食材だが、家庭でおいしく食べてもらうためのハードルは意外と高いと岸田さんは語る。

「実はマグロが嫌いな子どもって、意外と多いんです。そこには品質の問題も影響していると考えています。子どもは正直なので、品質の良いマグロは、嫌いだと言っていた子でも『おいしい』と言って食べてくれたりします。それくらいマグロは品質に左右される食べ物だといえます。一方で、普段食べているマグロと違うから、高品質なマグロを食べてもおいしく感じない、という人がいるとも聞きます。そういった層が今後増えてしまうと、本当に良いマグロが求められなくなってしまいます。わたしたちは今だけでなく未来の世代にマグロのおいしさや食文化を残すためにも、本当においしいマグロを届けて、マグロ好きを増やす努力もしていかなくてはいけません。購入者の方に解凍方法を2種類お伝えしているのも、ささやかですが、そのための努力のひとつです。解凍を上手くしていただくことで、わたしたちが自信をもってお届けする天上鮪のおいしさを、そのまま家庭でも楽しんでいただけます」

東洋冷蔵の清水事業所横には冷蔵庫事業、冷凍鮪加工事業、運輸事業を統合運営する関係会社・東洋冷蔵フード&ロジスティクス株式会社がある。グループ内外の加工・保管・運搬のニーズに応えている。代表取締役社長である天野秀紀さんに冷凍庫や加工の現場をご案内いただいた。

また、天上鮪を販売するにあたって、産地を細かく表示したのにも理由があるという。

「ワインやコーヒー、牛肉などは産地や品種にこだわる人も多く、マニアックな表示は当たり前になってきています。マグロもそうやって楽しむ人が増えてほしいという願いも込めて、一般の方には聞き慣れない産地まで表示し、品質へのこだわりを伝えています。マグロを好きな人や知識のある人、プロの人が見たらどれだけ良いマグロをそろえているかが一目瞭然ですし、この価格が決して高くないことも理解していただけると思います。マグロは好きだけど詳しくないという方は是非、産地を見ながら食べて、好みのマグロを見つけてください。12月は『これぞ天上鮪』とわたしたちが太鼓判を押す北大西洋海域で獲れた本マグロが登場しますし、ほかにもフリーマントル沖のメバチマグロや、入漁料を払って漁をおこなうアフリカ大陸ナビミア領海内で獲れたキハダマグロなど、月ごとに出来の良いマグロを入れているので、さまざまな味を楽しんでください」(須原さん)

「水産加工業の持続可能性のためには、消費者と生産者が互いにWin-Winの関係になることが絶対に必要です。そこで東洋冷蔵がなにを担えるのかというと、まずはマグロをはじめとする素晴らしい水産物を適正な価格で提供し、消費者の方に適切に価値を評価いただけるような仕組みを構築することで生産者をサポートすることだと考えています。みなさんがマグロを食べたいなと思われたときに、天上鮪も選択肢のひとつに加えていただければと思っています」(岸田さん)


12月は本鮪づくし!天上鮪頒布会コースのお届け例

天上鮪とは、日本船籍の超低温遠洋延縄漁船が世界各漁場の旬を逃さず漁獲し、一匹ずつ取り上げ丁寧に処理した鮪をさらに厳選した鮪のことです。

天上鮪頒布会6ヶ月コース(全6回月1回お届け)
天上鮪頒布会コースのお届け例(現在は12月からの4カ月コースを受付中。)

10月ケープタウン沖南鮪4サク+本鮪ネギトロ200g

11月フリーマントル沖バチ鮪4サク+フリーマントル沖ビンチョウ鮪2サク+本鮪ネギトロ200g

12月北大西洋海域本鮪3サク+本鮪ネギトロ200g

1月アンゴラ沖・ナミビア沖キハダ鮪4サク+北大西洋海域メカジキ2サク+本鮪ネギトロ200g

2月チリ沖バチ鮪4サク+ペルー沖マカジキ2サク+本鮪ネギトロ200g

3月北大西洋海域本鮪3サク+本鮪ネギトロ200g


天上鮪はWEBサイトからご購入いただけます。

春夏秋冬おさかな物語

お問い合わせ先

東洋冷蔵株式会社

TEL.0120-965-987(平日のみ10:00〜16:00)

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