解体現場からレスキューした古材に活躍の場を!
SDGsへの取り組みが遅れているといわれる日本。しかし全国各地を見渡すと、草の根的に新しい動きがはじまっていました。ここでは、一歩先を行く国内の取り組みをご紹介します。
アメリカの古材リサイクル店を
長野県諏訪市で夫婦が“再現”
開放感のあるフロアにところ狭しと並ぶのは、長い年月を経て味のある表情を見せる古材や古道具の数々。東野唯史さん、華南子さんが主宰する「リビルディングセンタージャパン」の活動は、解体される家屋や店舗などから未来につなぎたいものを“レスキュー”することだ。
もともと、空間デザインユニット「メヂカラ」として日本全国を飛び回り、地方の空き家問題を目の当たりにしていた2人。取り壊される建物から出る古材や古物を再利用することで、使い継いできた人々の思い出も大切にできたら——。そんな思いから、少しずつ廃材を空間デザインに活用していた。しかし、集めた材をストックしておくのも一苦労。各地の解体現場から出る古材を集められるスペースがあればと考えていた。
そんな折、アメリカ・ポートランドの古材リサイクルショップ「リビルディングセンター」を訪れた2人が目にしたのは、古材を活かし、自ら家具や日用品をつくったり、手を入れたりして、ものを長く大切に使う人々の姿。この土地に根づいたサステナブルなライフスタイルに触れ、大いに刺激を受けた。陽気に楽しく働くスタッフたちの姿にも惹かれ、店名を借りて日本でも実現したいと、帰国後すぐにリビルディングセンター本家にアポイントを取ったのは、ある意味必然のなりゆきだったともいえる。
当時2人が居を構えていたのは、長野県の下諏訪町。仕事の都合で一時的に住んでいた土地だったが、空き家の多さと首都圏へのアクセスのよさを考慮した結果、そのまま諏訪地域での開業を決意。2年が経ち、現在レスキュー件数は350件を数える。
「古材の魅力は、味のある見た目のよさはもちろん、資源として何度でも循環させられることにあります」と話すのは、華南子さん。
レスキューすることで解体現場のごみが減るとともに、新たに木を切らずとも再び活躍できる資源を引き上げられる。店内の暖房は薪ストーブを使用。割れてしまった材や加工の過程で出た半端な材は燃料にし、使い切る。木材を産業廃棄物として出したことは一度もないという。
レスキューしているのは古材や古道具だけではない。使い継いできた人々の気持ちに寄り添うこともまた、2人が大切にしていること。
「家を壊すことは、依頼主にとっては人生に一度の大きな出来事。寂しさや悔しさ、いろいろな感情があるなかで、家の一部分でも未来につなぐことで、その方の気持ちも救えたら」と華南子さん。2人の活動は、古材を再利用するだけではなく、そこに込められた人々の思いも未来に受け継ぐことで、新たな価値を生み出している。
ReBuilding Center JAPAN
長野県諏訪市小和田3-8
☎0266-78-8967
営業時間:11:00~18:00
定休日:水・木
*レスキューは、店舗から車で片道1時間圏内にて対応可能。
●情報は、FRaU2019年1月号発売時点のものです。
Photo:Koichi Tanoue Text:Emi Fukushima Edit:Emi Fukushima