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ルワンダを変えた日本人対談「貧困脱却のためのビジネスとは」(前編)
ルワンダを変えた日本人対談「貧困脱却のためのビジネスとは」(前編)
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ルワンダを変えた日本人対談「貧困脱却のためのビジネスとは」(前編)

ルワンダの女性たちが編んだバスケットを日本に紹介するというフェアトレードで、多くの注目を集めている小澤里恵さん。そのルワンダで、UCC上島珈琲・農事調査室長の中平尚己さんはコーヒーを通じ、農地の改良や取水場の開設などの活動を行っています。ルワンダでつながった二人に、それぞれの取り組みや将来の展望などを語り合ってもらいました。

10年前、コーヒー収穫量は他産地の10分の1ほどだった

――お二人の出会いは、ルワンダでのプロジェクトだったそうですね。

中平 一緒にプロジェクトを進めたというよりは、それぞれが行っていた活動を合わせたという感じです。

小澤 私は、ルワンダの女性たちにバスケットを編んでもらい、「RuiseB」というブランド名で日本で販売、対価を彼女たちの組合に支払うというビジネスを行っています。そのバスケットや私の活動をインスタで見たというUCCの方から、「弊社のルワンダコーヒーとコラボしませんか」と連絡をいただいたのがはじまりでした。

中平 私がルワンダと出合ったきっかけは、JICA(国際協力機構)のOVOP(One Village, One Product)というプロジェクトでした。村単位で特産品を育ててブランディングし、地域経済を活性させて貧困からの脱却をサポートするというもの。2012年にその対象のひとつにルワンダのコーヒーが選出され、JICA職員がルワンダのフイエ郡の村で活動していたんです。当時、私はエチオピアのコーヒープロジェクトの調査員として現場に入っていました。その際にJICAの方と知り合って、コーヒーの専門家としてルワンダのプロジェクトに関わることになりました。

UCCの中平さん(左)とRuiseBの小澤さん(右)。「現地の人々に必要なのは仕事。それぞれの生産物のクオリティを上げて輸出用の産品に仕上げてもらい、ビジネスパートナーになっていくことこそがサステナブルにつながる」と、同じ思いを共有する。

小澤 私は偶然、横浜のアフリカフェアでルワンダバスケットに出合ったんです。それまで縁もゆかりもなかったんですが、中平さんはいかがでしたか?

中平 私もそれまでは、ルワンダとまったく接点がなかったんですよ。もちろんいいコーヒー豆がとれる産地であることは知っていて、問題を抱えているというネガティブなイメージはありませんでした。けれども現地に農事支援に行ってみたところ、ぜんぜん量がとれていないことがわかったんです。

小澤 首都のキガリはITが導入された近代的な都市ですが、地方ではまだまだ貧困が深刻ですものね。

中平 そうなんです。農地の開発にお金がかけられないのが現状で、土壌の栄養不足によってコーヒーの木が生育不良に陥り、一般的な産地の10分の1ほどの収穫量しかありませんでした。そこで改良すべきことをリストアップして優先順位を決め、ひとつ一つ改善していったんです。

ルワンダのフイエ郡でとれたコーヒー。中平さんが参加した当初は500㎏だった買いつけ量が、10年たった昨年には、30tの生豆を買いつけできるまでのビジネスに成長している。

小澤 ビジネスが軌道に乗るまでは、思いがけない問題がいろいろ起こりますし、なかなかすぐに結果が出ませんよね。

中平 2年目には収穫量が2倍になったんですが、10分の1が10分の2になっただけですからね。その後も順調に収穫量は増え、10年目には当初の40倍にもなりましたが、まだまだ会社や消費者にはルワンダコーヒーのよさが伝わっていません。プロジェクトが始まって10年たっても、ゴールは遠いと感じています。

小澤 バスケットも同じです。まず、品質のいい製品を継続的に生産できるようになるまでが大変。そのあと、その魅力を消費者に知ってもらって、浸透させていくのにも時間と努力が必要でした。

中平 「つくる」だけでなく、「つかう」や「売る」ための工夫、つまりブランディングも必要なんですよね。農業は結果が年単位なので、とくに「つくる」部分に時間がかかります。ルワンダでは土づくりからはじめましたが、土壌を保温・保湿する「マルチング」は、日本ではビニールフィルムで覆うのが一般的。けれどもそんな資金も物もないので、葉っぱや籾殻で代用し、養分は牛糞、ウッドチップ、家畜の骨、草木の焼却灰で補いました。

たくさんの丘が印象的なルワンダ。「土壌は赤土で、栄養はあまり含んでいないんです。降雨量が少ないことも、収穫量が少なかった理由です」と中平さん。

相手の価値観を尊重したうえで、こちらの事情を説明する

小澤 現地の方々の信頼を得るのが、また大変なんですよね。

中平 最初は「コーヒーのことなんて何も知らない東洋人が来て、何ができるんだ」という感じでした。ただ、2年目で収穫量が倍になって、彼らの収入も倍になった。そうした目に見える結果が出たことで、信頼関係ができていったのです。コーヒー畑の改良と並行して、コーヒーの木への直射日光を防ぐ大きな樹木「シェードツリー」の植樹も進めていたのですが、なかなか現地の人々が動いてくれなかった。ところがある協力的な村で結果が出たところ、周囲の村がこぞってマネをしはじめたんです。

小澤 サステナブルな活動にするためには、相手もこちらも納得することが大切。バスケットにドロがついていたら、私たち日本人は「これでは売り物にならない」と思うけれど、ルワンダの女性たちは「これっぽっち汚れていても、誰も気づかないわよ」と言うんです。それを「これではダメ」と返すのではなく、相手の価値観も認める必要があると学びました。そのうえで「日本では、なぜ汚れていてはダメなのか」をきちんと説明する必要があるのです。

中平 本当にそうですよね。日本の過剰包装のパッケージとか、ルワンダの方々には一生理解できないと思います。ただ、基本的には真面目な人々なので、『どうすることが、自分たちの暮らしを改善することにつながるのか』を説明し、納得してもらえさえすれば、ちゃんと動いてくれるんですよ。

ルワンダに限らず、たとえばどこかで災害が起こった場合、安全と食糧が確保されたあと、人は次に仕事を求めるといいます。救援物資などを与えられるのではなく、自分でお金を得ようとするんですよね。それと同じで、働いていいものができて、それを買ってくれるビジネスパートナーがいる、その繰り返しで経済が好転していく……というのがサステナブルの理想型ですから。

小澤 コーヒーとバスケット、扱うものは違いますが、中平さんと私たちの目指すところは同じ。それがわかって意気投合し、コラボプロジェクトがスタートしたのです。

――後半に続くーー

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